ロンジェ琉球風水アカデミー、学長の横川明子です。
母校の大学院で行われた研究会で、琉球風水とロンジェの教育システムの発表をしてきました。今回の記事では、第1部として、「風水と建築における科学と美学の融合」をテーマにお話ししたいと思います。
私が所属していたのは、東京の池袋にある、立教大学大学院、異文化コミュニケーション研究科です。異文化コミュニケーション学という学問をを大学院で研究してきました。
「異なる文化背景を持つ人たちが、いかにして円滑なコミュニケーションをとっていくか」ということをテーマにした学問です。
「異文化」と聞くと「外国人とのコミュニケーション」と、まずイメージが浮かぶかもしれません。しかし、この分野では、例えば、「女性と男性では文化背景が異なる」「若者と高齢者では、文化背景が異なる」という考え方で、国籍に限定せず、人の内側にある「世界観」や「価値観」の違いというものに対して、「文化」という言葉を使っていると、イメージしてもらえるとわかりやすいかもしれません。
私が専門としている「風水」という言葉も、漢字で書けば「風」と「水」という言葉で構成されていますが、東京の風水と沖縄の風水では、全くその概念や使い方が異なります。
そこで、今回は、発表の前半では、東京の人達が持っている風水のイメージに対し、東京出身の私が沖縄で学んできた風水がどういうものなのかということをお伝えしました。
研究発表の機会とは、自分の意見をまとめるという意味ですごく良い機会ですけれども、他の人の発表を聞くということも、すごくいい刺激になります。
私は、風水を研究しており、風水の仕事を通して、主に建築やインテリアという業界の方々と一緒にお仕事をさせていただくことが多いです。
しかし、大学院の研究会では、異文化コミュニケーション学という領域に中で、幅広い研究が行われており、普段は、まったく関わることが内容ような領域の話に触れることができました。
大学院在学中、研究環境が自分にとても合っていると感じていたのは、「領域横断的な研究を奨励する」という研究科の教育方針でした。
例えば、「言語学の研究者であってもコミュニケーション学を学ぶ」、「コミュニケーション学の研究者であっても環境学を学ぶ」、「環境学の研究者であっても通訳翻訳領域を学ぶ」、という形で、自分の専門分野の研究に特化せず、コミュニケーション学という学問を通して、様々な領域の研究をすることが奨励されていました。
研究科の必修科目の中に、自分の研究とは、一見全く関係ない分野の科目が入っていたり、また、自分の研究分野とは全然関係ない分野の科目を取っても、卒業要件となる単位として認定される、というちょっと変わった研究科だったと思います。
一見関係ないように思えても、その中で使われてる様々な理論や方法論が、自分の研究領域においても有効であるケースというのも、たくさんありました。
なので、学生たちは、自分の研究領域以外の科目も、積極的に参加していました。そういった文化背景をもつ研究科ですので、今回の研究会でも「コミュニケーション学」という領域の中で、様々な分野の研究者が集まって発表がありましたが、一見、自分と全く関係ないと思われ領域に、大きなヒントが隠されていました。
例えば、私の一つ前の発表では、「科学とアートのコラボレーションは可能なのか?」という問いかけを持った研究発表が行われました。風水とは、一見全く異なる分野の研究発表に触れるわけですが、こういった、今の自分が所属してない、ほとんど交流のない業界のお話を聞くことによって、とても良い刺激を受けることができます。
私自身も、この問いかけには、非常に興味を持っている部分でした。
風水は、目には見えない氣という概念を扱い、数値化できない美学の側面をもっているので、「風水って何?」と聞かれても、回答は難しく、言い方によっては怪しい概念と思われてしまいます。
このため、私はできるだけ論理的なアプローチで、風水を解説をしようと心がけています。
「心地よい」という感覚は、100点とか50点とか、点数をつけることはできないですし、また、それが「良いのか悪いのか」といった〇か✖の二者択一で判断することも、難しい世界です。
何を心地よく感じるのか。
この背景には、その人の持っている世界観、価値観が大きく反映されているので、一つの感覚を生み出している、その周辺に存在する全ての状況を理解しなくては、アドバイスをしたり、方向性を見出すことができない世界です。とてもホリスティックな学問です。
私の前の発表では、科学とアートの衝突と言うか、なかなかうまく融合できないところの難しさ、というのが描かれていました。
私はその問いかけを受ける形で、自分の発表の際に、「科学とアートは融合できるのではないか」というお話をしてきました。
私は、風水学を通し、建築の世界に関わっていますが、建築は、まさに科学とアートの融合を目指す世界だと思います。
建築基準法をクリアするために、構造的に安全なものを科学的、論理的で作っていかなくてはいけない一方で、建築としてのデザイン性の高さ、周辺環境との調和、住み心地の良さなど、そういった美学も大切にされています。
科学と美学、両方のバランスを取りつつ、建築士によって、構造に強い建築士、意匠デザインに強い建築士いう風に、特徴があるように感じています。
では、私がどのように科学と美学の融合という形で、建築と関わっているのか。
私は建築士の資格を持っているわけではないので、私自身は設計図を書くということはできません。風水の知識を住宅に対して反映させる時に、どのように住宅を配置し、どのような向きにして、どのような形にし、どんなふうに間取りを描いて欲しいかということを、建築士に要望を出します。
これは、施主が建築士に出す要望の出し方と同じですが、この要望の中に、風水が良くなるように計算をして、要望を出しているところが、大きな違いです。
このイメージを、建築基準法に合致するように図面に描いていただいています。
一方で、私自身が建築図面を見る時に、住宅や間取り、部屋の形を見るだけで、心地よい氣が流れるかどうか判断できる部分がたくさんあります。それを科学的な視点から論理的に分析するという作業を行っています。
目に見えない心地よい氣の流れが、間取り図によって表現されている場合、いわゆる天才肌タイプの建築士の方は、実はその心地よさというものを、論理的というより、肌感覚で作っているケースがあります。
そういった、プロフェッショナルならではの経験値による肌感覚で作られた氣の流れを、科学的な視点で分析をしていくのが、風水師の一つの役割ではないかと思っています。
私がイメージしている氣の流れを感覚的に言葉で伝え、それを建築基準法に沿った構造物として科学的に形にしてくれる建築士の力。
一方で、建築士が描いた図面の中に隠れている心地よさというのを、科学的に見ていく風水師の力。
建築作品の制作を通して得た体験は、まさに科学と美学の融合だと感じながらの仕事でした。ただ、コラボレーションが成功するためには、建築士と風水師、お互いの感性の相性はあります。そして、建築士と風水師の相性に加え、施主様の価値観との相性も大きく影響します。
2019年の3月に、タイムス新聞の一面に掲載された門一級建築士事務所金城司さんのとのコラボレーションを通し、「科学とアートの融合というのは可能である」ということを自信を持って言葉にすることができました。
学術的な研究は大好きなのですが、学生時代、研究者としてどうしてもこれはやっておきたい、と感じたことがありました。それは、研究を知識だけの机上の空論ではなく、実際の現場で、そのアイデアを検証するということです。
風水学も、初めは文献を読むことから始めました。そして、自分で実践して、体感して、スクール生にアドバイスをして実証してきたことを、ようやく建築士というプロフェッショナルなスキルを持つ方々と、一緒に作品づくりができるようになりました。
これからも、知識を学び、実践を通して、数千年にわたり語り継がれてきた叡智を、次世代の地球に残していけるよう、研究を続けていきたいと思います。
東道里璃 (とうどう りり)
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