IKIGAI 生きがい概念図
「このままで、本当にいいのかな」
そんな問いが、ふと胸の奥に浮かぶことがあります。
目立った不満はない。
でも、どこかが空っぽなまま、日々が過ぎていく。
それはきっと、
“ほんとうに大切にしたいもの”が、まだ言葉になっていないからかもしれません。
私も、ずっとこの問いを抱えながら、
進んだり、立ち止まったりを繰り返してきました。
だからこそ、今こうして、
少しだけ遠回りして見えてきたものを、誰かと分かち合いたいという気持ちがあります。
私たちは誰でも、人生のどこかで
「自分らしさ」と「社会とのつながり」のあいだで迷います。
内側の思いと、外側の現実。
そのバランスがふっと整ったとき、
私たちは「生きがい」と呼べるような感覚に出会えるのかもしれません。
でも、それは誰かが用意した正解ではなく、
一人ひとりが自分の中からすくいあげるものだと思うのです。
この先では、
**価値観(自分が大切にしたいこと)**と
**社会的使命(誰かのために自分が果たせる役割)**という視点から、
わたし自身が試行錯誤のなかでたどりついた「生きがいの見つけ方」を、
7つの問いとしてまとめてみました。
これは、答えを教える手順ではなく、
あなたが自分自身と出会うための“問いの地図”です。
紙とペンを用意して、
深呼吸しながら、一緒にゆっくりと進めてみませんか。
「Ikigai(生きがい)」という視点から見つめる、日本発のライフデザイン
「生きがい(Ikigai)」という言葉は、いまや世界で注目されている日本的概念のひとつです。
日本では、どちらかというと高齢者の“第二の人生”にまつわる言葉として受け取られがちですが、検索ボリュームを見ると、興味深い傾向があります。
2023年10月時点で、「生きがい」は月間約11,800回の検索に対し、「Ikigai」は約44万回(aramakijake.jp調べ)。つまり、世界のほうが、圧倒的にこの言葉に魅了されているのです。
この「Ikigai」の概念を表現した図(Venn diagram)は、英語では数多く見かけるのに、日本語で見かけることはほとんどありません。
テンプレートとしてビジネスプレゼンに用いられているケースもあるほど、海外では「日本人の生き方を分析するフレームワーク」として関心が高まっています。
この記事では、その「Ikigai概念図」を日本人である私・東道里璃の視点から読み解き、考察してみたいと思います。
沖縄とIkigai──ブルーゾーンからの学び
「Ikigai(生きがい)」という言葉が世界的に知られるようになった背景には、アメリカの研究者・作家ダン・ベットナー氏の存在があります。彼の著書『The Blue Zones』(2008年刊)は、世界中の長寿地域に注目し、「ブルーゾーン」と呼ばれる5つの地域を紹介。そのひとつとして、沖縄が取り上げられています。この中で、沖縄の人々が長寿である理由のひとつとして「生きがい(Ikigai)」が挙げられているのです。
”ブルーゾーン沖縄の百歳人たちは、共通して以下のような習慣を身につけていた”と書かれた一番始めの項目に、”生き甲斐をもつ”ことが書かれています。
「生き甲斐を持つ」ということは以下のように説明されています。
”年配の沖縄の人たちは、朝起きるとき、きょう一日を生きる理由づけを、はっきり口にできる。明確な目的意識があれば、責任感が芽生え、社会で自分が必要とされている認識が強まる。それが。100歳になっても続いているのだ。”
また、記事冒頭に掲載している「IKIGAI概念図」の原型は、Héctor García, Francesc Miralles『Ikigai: The Japanese Secret to a Long and Happy Life』Penguin, 2017 Google Books版です。
私はこの原書(英語)に掲載されている図を参考にし、日本語訳を施したうえで、中央に「価値観」という要素を加えるという私自身の解釈を加えました。
この中心に据えた「価値観」は、琉球風水の実践やライフデザインの視点から、個人が自らの指針を見出すうえで欠かせない要素だと考えているためです。
なお、この原書『IKIGAI』は、世界70カ国以上で翻訳され、累計400万部を超える世界的ベストセラーとなっています。
日本語版は『外国人が見つけた長寿ニッポン 幸せの秘密(IKIGAI)』というタイトルで刊行されています。
ここで紹介するIKIGAI概念図の解釈は、原著の内容を単に翻訳したものではなく、図そのものから得たインスピレーションをもとに、私自身の視点で読み解いたものです。
沖縄の地で風水師として生きる私が感じ取った「Ikigai」の本質を、共有できればと思います。
「このままで、本当にいいのかな」そんな問いが、ふと胸の奥に浮かぶことがあります。 目立った不満はない。でも、どこかが空っ…
生きがいを構成する「4本の柱」
「生きがい」を見つけるためには、自分自身についての理解を深め、同時に社会の現実を見つめる必要があります。生きがいを見つけるための4本の柱とは、「生きがい概念図」の大きな4色の丸で囲われた以下の要素です。
- あなたの好きなこと(自己理解):あなたの関心
- あなたの得意なこと(自己理解):あなたの才能
- あなたが報酬を得られること(社会の理解):社会生活の中で報酬の得られる仕事
- 現実社会でニーズがあること(社会の理解):社会に求められていること
1)好きなこと、2)得意なことの答えは、自分の内側にあり、自分を理解することで見つけることができます。3)報酬を得られること、4)社会でニーズがあることは、自分の外側にあり、社会を理解することで答えを見つけることができます。
── 自分の内と外、どちらも大切にするために
① 好きなこと(自己理解)
「好きなこと」は、4つの要素の中でも最もイメージしやすく、心が動きやすい領域です。「楽しい」「ワクワクする」といった感情を伴うことが多く、写真や風景のようにビジュアルでも思い浮かべやすいものです。
たとえば、本棚を見渡せば、興味のあるジャンルに偏りがあるのに気づくかもしれません。
けれど、「好きなこと」とひと口に言っても、そのどこに惹かれているのかは人それぞれ。「なぜ好きなのか?」「どんな部分が心に響くのか?」と問いかけてみることで、自分にとっての“好き”がより明確になります。
② 得意なこと(自己理解)
「得意なこと」は、努力せずとも自然にできてしまう“無意識の強み”のようなもの。
他の人が苦労していることを、なぜかすんなりやれてしまう──そんな経験があるなら、それはあなたの才能かもしれません。
ただ、あまりに自然にできてしまうため、自分では気づきにくいのも事実です。
東洋の叡智「四柱推命」では、生年月日をもとにその人の性質や強みの傾向を読み解くことができます。また、現代のツールとしては「ストレングスファインダー」のような自己分析ツールを使うと、自分の強みを客観的に把握する手助けになります。
③ 報酬を得られること(社会的視点)
「報酬を得られること」は、経済的な視点から見た要素です。
アルバイトや会社勤め、フリーランス、起業など、形はさまざまですが、「あなたが対価を受け取れる活動は何か」を指します。
これは、社会とどのように関わっているかを映し出す鏡でもあります。現代の日本では、「どう働くか」「どんな形で貢献するか」を、自ら選び取ることができます。
④ 社会的に求められていること(社会的視点)
「社会に求められていること」は、社会全体のニーズや時代の流れに関わる要素です。
これは、自分ひとりではコントロールできず、時代や場所によって大きく変わります。
だからこそ、見つけるのが最も難しい側面かもしれません。
一方で、たまたまタイミングが重なり、時代の波に乗ってブレイクするようなこともあります。ただし、それが“たまたま”だった場合は、再現性がなく、時代が変わると対応できなくなることもあります。
【図表1】生きがい(IKIGAI)を構成する4つの要素
陰(内面) 自己理解 |
陽(外面) 社会的視点 |
---|---|
① 好きなこと 感情を伴う楽しいこと、 何に惹かれ、なぜ好きなのかを 掘り下げることで理解が深まる。 |
③ 報酬を得られること 社会から対価を得られる活動。 職業やビジネスなど、 お金が発生する領域。 |
② 得意なこと 生まれつき備わった才能や資質。 無意識にできてしまうことや、 他人ができないことを自然にこなす力。 |
④ 社会的ニーズのあること 社会や時代に求められること。 変化する要素なので、 常にリサーチと適応が求められる。 |
内面と社会の両面からのアプローチが「生きがい」の本質。 陰陽のバランスを意識することで、持続可能で満たされたライフスタイルが実現します。 |
2本の柱を手に入れると現れる「4つの意識」
上記4本の柱のうち、隣合う2つの要素を重ね合わせた接点に見えてくるのが、以下の4つの意識です。
- 情熱:「好きなこと」(自分)×「得意なこと」(自分)
- 専門職:「得意なこと」(自分)×「報酬を得られること」(社会)
- 使命:「好きなこと」(自分)×「現実社会でニーズがあること」(社会)
- 天職:「現実社会でニーズがあること(社会)」×「報酬を得られること」(社会)
①情熱 Passion
「好きなこと」(自分)×「得意なこと」(自分)がわかると、あなたが「情熱」を注げる対象がわかります。時間が経つのもの忘れ、やり続けてしまうことはなんですか。2つとも「自分」に関わる部分なので、「あなたらしさ」が最も現れる部分です。
②専門職 Profession
「得意なこと」(自分)×「報酬を得られること」(社会)がわかると、あなたの「専門職」がわかります。自分の才能と社会で求めらている業種との接点を見ているので、「あなたのビジネスの専門性」がわかります。大学や専門学校で専門性の高い知識を学ぶ、就職した会社の現場でスキルを習得するなど、知識とスキルによる専門性の高さを表します。「自分の才能をよく理解しているか」どうかが、「どのような専門性を磨くか」の鍵になります。あなたの能力の対価として報酬が得られるので、仕事の「やりがい」があります。
③使命 Mission
「好きなこと」(自分)×「現実社会でニーズがあること」(社会)から、あなたの「使命」がわかります。ここでは「好きなこと」という言い方より、「興味・関心のあること」のほうが適切かもしれません。「社会がもっとこうだったらいいのに、なんでこうなんだろう?」と疑問を感じ、その社会課題の解決に取り組むための在り方が「使命」です。自分の関心があることと社会の接点を見ているので、「社会の中でのあなたの役割」がわかります。「現実社会でニーズのあることは」時代の流れや地域性などにより変化します。しかし、「使命」は、軸でありコンパスなので変化しません。あなたの社会での役割の方向性を示すものです。外側の社会の中で、あなたの興味・関心ある領域に、「課題」を感じることで見つかります。
④天職 Vocation
「現実社会でニーズがあること(社会)」×「報酬を得られること」(社会)がわかると、「天職」(Vocation)がわかります。英語版のIkigai概念図には、この部分は「Occuparion」ではなく、「Vocation」です。どちらも”職業”を表す単語ですが、「Occupation」が、”生計を立てるための仕事”という意味に対し、「Vocation」は、”使命感を持って取り組むやりがいのある仕事”という意味を持ちます。④が「Occupation」であれば、「現実社会でニーズがあること(社会)」×「報酬を得られること」(社会)で十分ですが、④は「天職」(Vocation)という意味ですので、「現実社会でニーズがあること(社会)」×「報酬を得られること」(社会)であると同時に、①②③のすべてが含まれた上で報酬が得られる仕事と考えるのがふさわしいでしょう。生きがいを見つける上で、一番最後に考えます。
【Point2】 4本の柱の中央に「価値観」という大黒柱
全ての4本の柱が見つかっても、「生きがい」を感じられないことがあります。それは、あなたの「価値観」に合っていない場合です。価値観は中心にある「大黒柱」で、人生の全てを支えている中心軸です。そして、人生の方向性を示す「コンパス」の役割をもっています。「価値観」は、幸せな人生を送るための最も重要な要素なので、概念図の中心にコンパスの役割として【価値観】の文字を入れました。中心のコンパスの針が、あなたの人生観と合っている時に、「生きがい」を感じることができるのではないでしょうか。

「やりがい」とは、能力が評価される仕事や、人に喜んでもらえる仕事で感じることができます。しかし、仕事の「やりがい」を感じても、あなたの価値観の合わないことは「生きがい」にはならないでしょう。「やりがい」を感じているのに何かが違うと思っているのであれば、「価値観」を今一度確認してみましょう。
価値観を導き出す時に、一つ大きな注意点があります。それは「他人軸」ではなく「自分軸」の価値観であること。親、先生、社会から「こうすべき」「これが正しい」と刷り込まれた価値観があります。「有名大学に入る」「有名企業に就職する」「お金持ちになる」「高いステイタスを得る」「有名になる」「お金持ちと結婚する」などが典型的な例です。自分が心からそう思っているのではなく、「そうならないと周りの人や社会からダメな人間だと思われる」と、他人の目を氣にして、他人の価値観で自分の人生の方向性もそうだと思いこんでいるケースがあります。それは、本物のコンパスとなる価値観ではありません。価値観は一人一人違って当然のもので、価値観に優劣はありません。あなたの人生の目的となる本物の価値観を見つけることが大切です。
また、4つの意識は、確認して決めていく順番が重要です。自分の内側を理解せずに、外側の世界だけで仕事を決めてしまっているからです。人生のバランスを取るためには、4つの意識を確認していく順番が重要です。上記①から④の順に、自分の内側から理解していくことが、生きがいのある人生を歩むための最適なプロセスになるでしょう。現在の生き方、働き方に違和感がある場合、①情熱と中心の価値観から見つめ直すことが、あなたにとって最適な道を見つける手助けになります。
cf. 4本の柱が見つかっても「生きがい」を感じられなかった事例
私の事例をお伝えします。20代の時、交通情報キャスター、フリアナウンサーの仕事をしていました。小学生の時は「声優」、高校生の時は「アナウンサーになりたい」と夢を描いていました。学生時代は国語の音読が大好きで、水泳大会などの学校行事のMCをした経験はとてもよい思い出です。交通情報キャスターの仕事は、好きなこと、得意なことを生かして、社会が求める役割もあり、お給料もいただくことができました。しかし、ある時、未来が見えなくなってしまいました。それは、私には、「自由・冒険・挑戦」「家族優先」「自然と調和する」という価値観がありました。仕事はとても充実していて楽しかったです。しかし、「決まりが多く自由が効かない」「忙しくて仕事優先」「人工的な空間で長時間過ごす」などの現実が、私の価値観と合わなかったのです。
また、アナウンサーという職業になりたいと思った理由の一つは、親や友人に見下される人生から逃れたかったこともありました。高校も大学も成績が悪くて、いつも親から怒られ、友達からも露骨に見下したような言葉を言われたことがあります。「アナウンサーになったら、もう酷いことを言われないのではないか」そういう思いがありました。しかし、これがまさに他人の価値観で自分の就職を決めた例の一つになるかもしれません。
また、交通情報キャスターといっても、当時は専門性も中途半端でした。「次にマイクを握る時は、自分の内側にあるメッセージを自分の言葉で伝えられる人間になる」と決意して退職しました。「自分の価値観に合った人生を歩むことを決意した瞬間」でもありました。
いろんな想いはありますが、交通情報キャスターの職業についたことに対し、後悔はありません。なれて良かったと思ってますし、今も誇りに思っています。人生の失敗ではなく、プロセスだと捉えています。憧れの職業であったことに加え、他人から見下された経験がいい意味でのやる気になった可能性もあります。しかし、今後の人生では、他人軸に振り回されて未来を決めることはありません。
3本の柱を手に入れると湧き上がる「4種の感情」
上記4本の柱のうち、3つの要素が重なり合った時に「どんな感情になるか」について、次の4つの感情が書かれています。
- 満足感、充実感。しかし、自分は社会の役には立たないという感覚、無能感【現実社会のニーズがない】
- 楽しい、充足感。しかし、お金にはならない【報酬がない】
- ワクワクする、自己満足感がある。しかし、先行きに不透明感がある【得意ではない】
- 経済的不自由はない。しかし、空虚感でむなしい【好きになれない】
①満足感、充実感。しかし、自分は社会の役には立たないという感覚、無能感
「好きなこと」(自分)×「得意なこと」(自分)×「報酬を得られること」(社会)
好きなこと、得意なことで情熱があり、得意を生かして専門性が高く報酬も得ている。しかし、「現実世界のニーズ」が抜けているので、自分の使命となる役割がわからない状況です。「自分」の比率が高いので、自分自身の欲求は満たしています。自分の社会での役割を見いだし、「使命感」をもつことができれば満たされます。
②楽しい、充足感。しかし、お金にはならない
「得意なこと」(自分)×「好きなこと」(自分)×「現実社会でニーズがあること」(社会)
得意なこと、好きなことで情熱があり、関心のあることで社会のニーズに応えている使命感もあり、楽しい。「自分」の比率が高く、やりたいことができている精神的な満足度は高いですが、「報酬を得られること」がないため現実的な生活を営む経済力を必要としている状況です。得意なことの専門性を磨き、その専門性が社会に役立つことができれば満たされます。
③ワクワクする、自己満足感がある。しかし、先行きに不透明感がある
「好きなこと」(自分)×「現実社会でニーズがあること」(社会)×「報酬を得られること」(社会)
好きなことを仕事にし、現実社会でも役割を与えられ、報酬も得られている。かなり満足度が高いですが、「得意なこと」に気づかず専門性に磨きがかかっていないため「専門職」が欠けています。知識やスキルに自信がなく、才能を生かしたスキルを磨くことを必要としている状況です。「好きなこと」を掛け合わせて磨き続けることのできる専門性が見つかると満たされます。
④経済的不自由はない。しかし、空虚感でむなしい
「得意なこと」(自分)× 「報酬を得られること」(社会)× 「現実社会でニーズがあること」(社会)
才能を生かした専門性の高さで報酬を得ており、また、その専門性は社会的ニーズも高い。仕事の依頼も多く、十分な報酬を得られている状態。しかし、社会的使命感が欠けているので、何のために仕事をしてるのかわからない状況です。お金にはなるけどやりたくない仕事を抱え、ストレスが溜まっているかもしれません。好きなことと思っていたことが、単なる憧れで、現実の仕事内容はイメージとは違ったという場合もこれに当てはまります。好きなことを見つける時は、一つ答えが出たら「なぜ、好きなのか」「どこが好きなのか」と深掘りし、好きなことの具体的な部分まで明らかにしていきましょう。得意なことと重ね合わて楽しくやり続ける「情熱」持つことができ、「私は〇〇のためにこの仕事をしている」という明確な社会的使命感が得られると満たされます。
さて、あなたは上記のどれかに当てはまりましたでしょうか。自分の状況を理解することが何より重要です。欠けているものががわかったのであれば、欠けているものを補えばいいのです。多くの人が経験するのは、まず、”③ワクワクする、自己満足感がある。しかし、先行きに不透明感がある”ではないでしょうか。興味関心のある領域の会社で働くことです。次に、多いのは”④経済的不自由はない。しかし、空虚感でむなしい”ではないかと思います。士業などの国家資格をお持ちの方などは、ここに当てはまるケースが多いかもしれません。”②楽しい、充足感。しかし、お金にはならない”は、主婦など経済的に安定している方が悩まれていることが多いかもしれません。”①満足感、充実感。しかし、自分は社会の役には立たないという感覚、無能感”は、好き、得意、専門性を手に入れた上で、最後に「使命」を探している状況。起業家の方など好きなことで自由に仕事をしている方が、ここに悩んでいることが多いのではないかと思います。
4本の柱のうち、「好き」「得意」2つは「自分」の視点、「社会的ニーズ」「報酬」の2つは「社会」の視点の要素です。3つの要素が重なる場合、「自分」の比率が高いと「内面的充実感」が高く、「社会」の比率が高いと「外面的充実感」が高くなります。
「Ikigaiライフデザイン」7ステップ
これまで、「生きがい(Ikigai)概念図」を元に、それぞれの要素を解説してきました。それでは、「生きがい」を見つけ、ウェルネスなライフスタイルを創造するには、どのような順番で考えていけばいいのでしょうか。ここでは、「生きがい(Ikigai)概念図」の作成プロセスを「Ikigaiライフデザイン」と呼び、私なりの考え方でお伝えします。
- 「価値観」を明確にしてコンパスを得る【自分】
- 「好きなこと」を探す【自分】
- 「得意なこと」とを探す【自分】
- 「好きなこと」「得意なこと」の接点から「情熱」を見つける【自分】
- 「価値観」を軸に「得意なこと」と「報酬が得られること」の接点から「専門職」を磨く【自分】×【社会】
- 「価値観」を軸に「好きなこと(興味・関心)」と「現実社会のニーズ」の接点から「使命」を見つける【自分】×【社会】
- 「社会的使命」を軸に「報酬の得られること」と「現実社会のニーズ」の接点にある「天職」があなたの理想の仕事【社会】×【社会】
①「価値観」を明確にしてコンパスを得る【自分】
価値観とは、生き方の方向性を示すコンパス。「人生の目的」です。自分を律するもので、「ポリシー」「考え方」「あり方」とも言いかえることができます。「好き」「重要」「受容」などの判断基準であり、人格を形成するものでもあります。では、「価値観」とはいかにして形成されるのでしょうか。価値観は大きく2つにわけることができます。1)個人的価値観と、2)社会的価値観です。また、それぞれの価値観には、「ポジティブ」な一面と「ネガティブ」な一面があります。
個人的価値観
先天的なものであり、個人の好み、考え方が反映されたもの。信条、信念、思想など。次のステップ「好きなこと」を掘り下げていくプロセスでも、いくつかの価値観に気づきます。「好きなこと」が具体的であるのに対し、「価値観」は、抽象度が高く本質的なもので、内側に存在する意識です。個人的価値観がポジティブに機能すれば自分を大切にものごとを判断することができます。ネガティブに機能すると、わがまま、固執、頑固で視野の狭い世界で生きることになります。
社会的価値観
後天的なものであり、所属する地域や時代などの文化的背景の影響を受けているもの。文化的背景も2つに分類できます。思考パターン、行動パターンなどの「精神文化」と、衣食住などの「物質文化」です。地域や時代などによって差異があります。自分の外側にある環境的な要因です。社会的価値観がポジティブに機能すれば社会と調和することができます。ネガティブに機能すると、他人の目を氣にしすぎて、自分を見失ってしまいます。社会的価値観のネガティブな軸を「他人軸」と呼びます。
◆自分軸とは何か
価値観の軸は二層構造になっており、中心に「個人的価値観」があり、外側を「社会的価値観」が覆っています。「自分軸」の価値観とは、あなたが心からこう在りたいと願う、あなたの人生で最も大事にしている想いであるポジティブな個人的価値観です。個人的価値観と合わない、親、学校、社会に押し付けられた社会的価値観は、ネガティブに機能する「他人軸」です。
価値観とは、生き方の軸になるものです。価値観が明確でない時は、判断基準があいまいになり、決断にもブレが出でます。一方、価値観は成長する、広がる、変化するという性質もあります。常に自分の価値観と向き合うことが、人生の判断を行う上でとても重要です。
個人的価値観と合う社会に所属できると最も居心地が良いといえるでしょう。そのためには、どこに住むか、どこで働くか、誰と一緒にいるかを選択する際に、自分軸の判断基準で決断できると幸福度の高い人生と感じることができるのではないでしょうか。
◆価値観と住宅の関係
「住宅は人生を映し出す鏡」と言われているほど、家にはその人の価値観が反映されています。家についてどう感じているかで、ご自身の価値観に気づくことができます。また、それぞれの問いかけを深掘りしていくことで、今お住まいの家があなたの価値観とあったいるかどうかがわかります。以下の質問を問いかけてみてください。
- なぜ、その土地に住んでいるのですが。この先の未来もその土地に住み続けますか。それとも、他の土地に移転したいですか?
- なぜ、その家に住んでいるのですか。その家は、あなたを幸せにしてくれていますか?
- 家の間取りについて、どのように感じていますか?快適ですか?改善したいですか?改善したいのであれば、何をどう改善したいか考えてみましょう。
- なぜ、そのインテリアで生活しているのですか?そのインテリアはあなたにどのような影響を与えていますか?快適ですか?改善したいですか?改善したいのであれば、何をどう改善したいか考えてみましょう。
- 掃除、片付け、食事など、ライフスタイルに満足していますか?改善したいですか?改善したいのであれば、何をどう改善したいか考えてみましょう。
私は琉球風水師として新築やリフォームなど家づくりのお手伝いをしてきました。家づくりで最も重要なことは、施主様の「価値観」を明確にすることです。価値観にあった家に住むことができるのが一番幸せだからです。「今の家のどんなところが好きなのか」「今の家にどんなストレスを感じているのか」を具体的に知ることで、その方の「価値観」がわかります。価値観がわかると「どんな家に住みたいのか」がイメージが具体的に見えてきます。価値観と調和した家は、快適であり、本当のなりたい自分になれる家になります。
◆「目的」と「目標」の違い
「目的」と「目標」は違います。あなたが何か資格を取りたいとします。「〇〇資格取得するぞ」というのは目標です。「目的」とは、何のために◯◯資格を取得するのかと深掘りした時の「何のために」の部分です。「目的」である価値観は、北極星のような存在で、あなた向かう方向の目印となるもの。孫悟空は、天竺を目指して旅をし、途中、様々な場所で戦いを繰り広げます。天竺が「目的」、途中のスポットで戦いに勝つことが「目標」です。「目的」である「価値観」を見つけだしましょう。
◆使命
また、価値観を見つける課程で、社会と接点のある価値観が出てきたら、それは「社会的使命」に当てはまるかもしれません。自分自身の生き方のコンパスであればあなたの「価値観」です。その価値観が社会課題の解決に貢献し、社会でのあなたの役割となるものは「使命」にもなります。
②「好きなこと」を探す【自分】
「好きなこと」とは、あなたが興味・関心を持っている分野です。画像でイメージしやすいので、一番わかりやすい部分です。「楽しい」という感情を辿っていくと、好きなことのイメージが浮かぶでしょう。好きなことが思い浮かんだら、「それのどういうところが好きなのか」までわかると、より具体的です。さらに、「なんで好きなのか」と深掘りしていくと、抽象度が高くなったところで、それはあなたの価値観にたどり着きます。
私の場合ですが、アウトドアが大好きで、スクーバダイビング、トレッキング、スノーボードをしてきました。どれにも共通しているのは、自然の中で身体を動かすことが好きです。また、動植物にはあまり興味がなく、海や山の景色を見るのが大好きです。同じ趣味でも、どこが好きかには違いがあるんですよね。さらに、「なんで好きなのか」と深掘りしていくと、自然が好きで、自然の中にある良いエネルギーに触れている時間が私にとっての最高の時間です。そして、「自然と調和して生きていきたい」という価値観にたどり着きます。
それから、私は風水に出会って、風水が大好きになりました。理由は、「家がどんどん快適になる」「陰陽五行の哲学で、心の在り方が正される」「宇宙的な世界観が壮大」「上空からバードビューで見る全体を俯瞰した視点」などがとても魅力的です。そして、家庭に対する価値観が高く「家」「インテリア」が大好き。30代の頃は、家の整え方というのが全くわからなかったのですが、風水を実践することで、楽しみながら家を整えることができました。それにより、物質的にも精神的にも家が最も安全な場所となり、笑顔と優しい言葉で過ごせる毎日に幸せを感じています。
建築・インテリアの理論は必要性を感じても好きではありません。一方、風水理論は好きです。それは、東洋の天神合一思想がベースで「人と自然が調和しながら共存する」という考え方が軸になっているからです。建築・インテリアの理論は西洋から入ってきたもので、西洋の一神教的な世界では「人が自然を支配する」という考え方が軸にあります。西洋建築的な考え方は、海を埋め立て、山を切り開きどんどん自然が破壊されていきます。こうして、「なぜ好きなのか」「どういうところが好きなのか」と深掘りすると「価値観」までたどり着きます。「自然との調和」が風水の軸にあることが、風水が好きな理由です。心の在り方が正される面では「美意識」という価値観、上空からバードビューで見る全体を俯瞰した視点からは「戦略性」という価値観、家が整うことが嬉しいというのは「家庭を大切にしたい」という価値観が現れています。
旅行は好きですが、都市観光や団体ツアーに参加すると必ず具合が悪くなります。一人旅が好きで、目的はアウトドアと聖地巡礼、歴史や精神文化にふれることです。風水と聖地巡礼はリンクしています。聖地巡礼が好きなのも、やはり、自然の奥深いところに入り、神聖な自然の氣にふれることができるからです。聖地でお祈りすると、様々なメッセージをいただけるので、心が癒やされ、活力が湧いてきます。「自然との調和」というの価値観が、旅行する時にも反映されています。
あなたも好きなことを思い浮かべ、どこか好きなのか、なんで好きなのかと問いかけてみてください。すると、表面的には違うことのように見えることでも、本質は同じことがあります。本質的なところにたどり着いたら、それは、あなたの価値観です。
③「得意なこと」とを探す【自分】
「得意なこと」は、あなたが生まれ持って身につけているもので、言い換えれば「才能」です。無意識に行っている考え方の傾向であり、思考のクセです。無意識で考え方ことはそのまま行動になるので、行動習慣でもあります。一方、知識やスキルなどは「得意なこと」ではありません。知識やスキルは「後天的」、得意なことは「先天的」な要素です。知識やスキルは「表面的」なものです。時代や地域によって、必要であったり、なかったりします。得意なことは「本質的」なものです。考え方や思考習慣なので、時代や地域が変わっても能力を活かすことできます。知識やスキルはこの後出てくる「専門職」に当てはまります。「得意なこと」と「報酬を得られること」の接点に位置するものです。
「得意なこと」とは、あなたの特徴で、「長所」でもあり「短所」でもあります。「長所」か「短所」かは、捉え方次第です。古代中国哲学に「陰陽思想」があります。相対する2つの性質のものは、対立することなく補い合う存在であるという考え方です。相対する2つの存在を善悪でジャッジせず、どちらも必要な存在であるとニュートラルに捉えるのが特徴です。「短所」と思ってきたことも、捉え方をひっくり返せば「長所」になります。
先天的な興味関心(好き)・才能とは
東洋思想には、生まれた瞬間の天体の配置から受け取るエネルギーの質で、人の特徴をみることができる「四柱推命(しちゅうすいめい)」という学問があります。古代中国から伝わる占いで、生まれた「年」「月」「日」「時間」を4つの柱として「四柱」と呼びます。通変星と呼ばれる星の種類が10種類あり、どこにどの星をいくつもっているかで人の性質や傾向がわかります。
私は「印綬(いんじゅ)」「正財(せいざい)」という星を持っています。「印綬」は学問の星で知識を学ぶことや歴史、古典に興味関心が強く、知識を吸収すること教えることが得意であること特徴です。「正財」は安定した財を得るという意味を持ちます。コツコツ地道な努力ができる性格で、堅実な働き方が向いています。
古代中国では、「天運」「地運」「人運」の3つの運を鍛えてこそ、幸せになれると考えました。「天運」とは、生まれた時の天体の配置によって受けたエネルギーにより授かるその人の運命であり特徴です。これは変えることができません。「好きなこと」「得意なこと」を見つけて磨くということは、「天運」を活性化するということです。後天的な環境を整えることは「地運」を活性化します。「人運」とは、人としての在り方、「人間力」を問うものです。「生きがい」の概念図には含まれていませんが、人間力が高まれば人生の質は上がります。「天運」は先天的で見つけて活かすもの。「地運」と「人運」は、後天的で自分で鍛えるものです。
④「好きなこと」と「得意なこと」の接点から「情熱」を見つける【自分】×【自分】
「好きなこと」「得意なこと」が見つかったら、この2つの丸の重なる部分「情熱」を注げることを見つます。私の例で恐縮ですが。私の好きなことは、アウトドア、風水、家。得意なことは、知識を学び人に教えること、堅実な働き方です。アウトドアに関しては、スキューバダイビングのガイドができるダイブマスターの資格は持っていますが、スクーバのガイドで働いたことは一度もありません。学生の頃、経験が積みたくてダイビングショップで雑用スタッフとして働き、潜らせてもらったことがある程度です。ダイビングなどアウトドアは好きなのですが、動植物に興味がないのでガイドには向きません。それから、体力的な問題で、海や山の仕事では、万一の時の人命救助のトレーニングがあり、厳しい自然の中で、物理的に人を助ける力が必要です。ダイビング器材そのものが重くて、自分のことで精一杯。とても人の面倒は見れないので、仕事にはできませんでした。
一方で、風水は知識を学ぶのも楽しいし、実践も家の中でできること。学ぶ、教えるが得意で、特に、アナウンサーをやっていたので人前で喋るのが得意。学んだことを体系化してカリキュラムをつくり、それを教えるというのはまさに天職だと感じました。しかも、思想的根幹には自然との調和があり、家庭を大切にするという点でも私の価値観に合っています。それで、仕事なのか遊びなのか境目がないくらい、風水の研究を楽しんでいます。
ただ、仕事をしていて、自分には合わないこともありました。それは、一見さんの単発の風水鑑定です。私は、情報を集めて体系化し、ゼロから1の世界を作り出し、一気通貫で構造化することが好きです。それは、風水が好きな理由でもお話したように「全体を俯瞰したバードビューの視点」に魅力を感じているからです。家づくりであれば、土地、間取り、インテリア、暮らしの在り方まで一気通貫で見ています。単発コンサルティングは家づくりのプロセスの一点だけを切り取ってアドバイスを求められます。しかし、私には土地選びから、間取り、インテリア、暮らし方までの時間的な流れまでが全て見えてしまいます。ですから、その膨大な情報を一回のコンサルではとても伝えきれませんでした。全体が見通せる目を持っていることは長所ですが、全体の中の一点だけを切り取られた時には、全体が見えすぎてしまうことで何もできなくなるというのが私の特徴です。苦手なことを手放そうと、単発の風水鑑定は止めました。
⑤「価値観」を軸に「情熱」と「報酬が得られること」の接点から「専門職」を磨く【自分】×【社会】
ここまでの「価値観」の明確化、「好き」と「得意」をかけ合わせるところまでは、自分の内側に向かっていました。IKIGAI概念図の解釈の仕方は、人それぞれだと思いますが、私は、分析の順序が重要だと感じています。まず「自分の内側」と向かい、内側の答えが出てから外側の世界と掛け合せていくことが大切です。先に外側の世界から考えてしまうと、他人軸で世界を作ってしまうからです。
「好き」と「得意」は、完全に内側の世界です。この内側の2つの要素が重なり合った「情熱」と、「報酬が得られること」を掛け合せます。あなたの「得意なこと」を磨き、専門家として仕事するなら、どんな専門職でしょうか。それは、あなたの価値観と合っていますか?大学、大学院、専門学校などに通うケース、独学のケース、そして、職場でスキルを磨くなどのケースがあります。この「専門職」の領域は、生み出すのに最も時間がかかるところです。土台を築くのに、5年から10年くらいかかるところでしょう。
私はアナウンサーになるという夢を実現するために、大学時代にアナウンス学校に通いました。そして、就職してからもアナウンス学校に通っています。勤務時間中は本番をこなすので精一杯で、練習などすることはできませんでした。「アナウンス技術を磨きたい」と、会社を終えてからアナウンス学校へと通っていました。憧れの職業につき、得意を生かし、仕事ができている。とても幸せでした。しかし、前述のように、「価値観」と合っていなかったため、何のために仕事をしているのか、ある時わからなくなってしまいました。他人軸で仕事を決めてしまった場合の、良い事例だと思います。
私が自分の才能が開花した瞬間は、明確に覚えています。それは、30歳を少し過ぎて進学した大学院でした。それまでの学生生活は、親や社会から白い目で見られないために学生の皮を被っていただけでした。勉強なんてしたくないし、授業もできるかぎりサボりたい。そんな大学生活でした。しかし、大学院への進学は自分の意思でした。アナウンサーの仕事をする一方で、「何か専門性を身に着けたい」と考えていました。大学院で開花した私の才能とは、「論理的思考力」です。「異文化コミュニケーション学」という学問の価値観が私の価値観とぴったりで、その影響も大きかったようです。四柱推命の「印綬」を持っていることは話しましたが、高校卒業後に他人軸で進学した大学では、「論理的思考力」の才能は全く開花しませんでした。自分の意思で、自分の価値観で大学院に進学した時、ようやく才能が開花したのです。本当に楽しい大学院生活でした。
風水を学び始めたのは、ちょっとした「関心」からでした。プロになろうなんてつもりはなかったです。ただ、家づくりが難しくて、なんとかならないかなと。もし、風水を学ぶ目的が家づくりであったなら、家が手に入った時点で風水もやめています。しかし、あれから15年、飽きることなく続けています。風水が大好きで、そして、教育コンテンツを作って教えるのが得意で、価値観にあっているからです。もちろん、途中でなんどもやめようと思ったこともあります。でも、やめられない。やめようとすると、必ず待ったがかかるというのを繰り返し、「今生でのお務めを終えるまで、やめることはできない」と腹をくくりました。こういう部分が「使命」ということなのかもしれません。
専門性を磨き「専門職」といえるだけのものを手に入れるは時間が必要です。それだけに、方向性を間違えないことが大事です。「好きなこと」「得意なこと」で、あなたの「価値観」合っているかどうかを確認してから、学校選びや資格取得をすると良いでしょう。親や社会に押し付けられた価値観や、「なんか役に立ちそう」という機能性だけで選んではいけません。自分の内側の本質的なところを起点にして決めることが大事です。
⑥「価値観」を軸に「好きなこと(興味・関心)」と「現実社会のニーズ」の接点から「使命」を見つける【自分】×【社会】
「使命」のヒントは、あなたの「価値観」を見つける時に、一緒に出てきているものもあるでしょうあ。社会生活の中で、「なんでこうなんだろう」「もっとこういう社会であればいいのに」と、あなたが感じた部分です。人間の脳には「RAS」という機能があり、世の中に存在する膨大な情報の中から、あなたの「興味・関心」というフィルターを通して、世界を見ています。あなたに見える世界とは、あなたの興味関心のある世界しか見えないものなのです。「もっとこういう社会であればいいのに」と感じたことに対し、その社会課題の解決に取り組む姿勢が、あなたの「社会的使命」です。
「好きなこと、得意なことを仕事にし、専門的な知識やスキルも身に着けているのに、『何かが足りない』と感じている」それは、「使命感」が欠如からきているのではないでしょうか。自分を充分に満たせば幸せになれるように思いますが、やはり、人生は陰陽のバランス取れていると幸福度が高くなります。まず先に「自分を満たすこと(陰)」が大切ですが、自分を満たしたら「社会の中のパズルの1ピースとして役割を担うこと(陽)」で、陰陽のバランスが取れます。社会でどの役割を担うのかの「軸」となり「方向性」となるのが「社会的使命」です。
「使命」を見つける時は、まず、「価値観」と「情熱」を確認しておきましょう。
私の価値観は、優先順位の高い順に、1「自然との調和」2「個性の輝き」3「心の美」4「家庭の安定」5「自由と冒険」の5つです。
好きなこと(興味・関心)は、「風水」「哲学」「歴史」「文化」「祈り」「自然」「アウトドア」「聖地」「沖縄」「自然療法」「健康(ウェルネス)」「家」「インテリア」「間取り」「建築」「集落」「街づくり」「癒し」「ヒーリング」「地域」「精神」「人間学」「価値観」「使命」「異文化コミュニケーション」「自己実現」「首里城」「言霊」「風景」「色」「環境」「教育」「美」「心」です。こうして書き出してみると、好きなことは価値観と密接に関わっていると実感します。
得意なことは、「体系立て考える」「全体を俯瞰して戦略を考える」「ものごとを追求できる」「人の気持ちを察することができる」「教える」「大勢の人の前でわかりやすく物事を伝える」「ものごとの本質を見抜く」「右脳と左脳をバランスよく使える」「異なる領域のものをつなぎ合わせて新しいものを創り出す」です。まとめると、本質をとらえ具体と抽象を行き来して伝えるが得意なので、「哲学を軸にデザインを体系化して教える」ことが得意です。興味関心のあることは無数に出てくるのですが、得意なことはシンプルですね。
では、「使命」を見つける問いかけとなる「社会に問題意識を感じていること何か」と考えると、「自然環境破壊」「伝統文化の喪失」「マスメディアの報道の質」「日本の住環境のあり方」「食や空気の安全性」「効率性・経済性優先」「偏差値教育」「他人軸の刷り込み社会」「二者択一の善悪二元論」に問題意識を持っています。
では、この問題意識を興味関心と掛け合せ「使命」に置き換えるとどのような言葉になるでしょうか。
●経済性優先の社会で自然環境が破壊されていく。自然環境を守りながら美しい自然や地域の景観美を守ることはできないだろうか➡自然環境を生かした街づくりで地域の伝統を守りながら活性化する
●心が癒やされる自然豊かで良い気の流れる美しい住宅に誰もが住まうことができる社会になって欲しい➡西洋的な現代建築では満たされない住環境の快適さを、東洋哲学の視点からアプローチして現代建築と融合し、心地よさと美しさを両立するデザイン手法を開発する
●他人の価値観ではなく、自分の価値観を大切に、使命を全うできる人生を歩むことができる社会になって欲しい➡「生きがい」とは何かを論理的に構造化して再現性を高め、誰もが生きがいを感じられる社会にする
そして、「得意なやり方で提供できる興味関心のあることとは何か(=情熱)」という視点と「現実社会のニーズ」で絞り込んでいくと、あなたの「使命」が見つかります。
◉天人合一思想を軸にした街づくりと家づくりの研究を通し、誰もが生きがいを感じる社会に貢献する
この「使命」を軸に「現実社会のニーズ」と「報酬の得られること」の接点が、あなたの理想の仕事です。
cf.「個人的使命」も探す
「使命」は、「報酬が得られる」ことと重ね合わせることも意識すれば、自ずとビジネス的な視点になります。ビジネス的な視点での使命を「社会的使命」とすれば、もう一つ「個人的使命」についても考えておきましょう。このタイミングで文章化すると家庭や地域での役割がクリアになります。ビジネス的な「社会的使命」とプライベートの「個人的使命」の両方を明確にしておくと、人生のバランスがより美しくなります。
「個人的使命」とは、「報酬」を意識せず、価値観に合った人生を送るための「社会での役割」に集中します。以下、私の例を記載します。
- 子どもたちが小学生〜高校生の間は、子どもたちが帰宅した時に「おかえり」と家でお迎えできるお母さんになる(母の役割:家庭の安寧、家族の笑顔、心の平穏)
- 家が好き。家にいるのが好き。家でゲストをもてないしたい。住むだけで幸福感がある地域、居るだけで幸福感のあるインテリアの家に住み、一緒に住む家族、訪れるゲストが幸せな気持ちになれる家をつくる(サロンホステスの役割:家庭・知人・友人とのつながり)
- 地域のイベントで得意の声を使うことを生かして、MCなどの役割で貢献する(地域住民の役割:地域貢献、地域のつながり)
- 地域の御願行事に参加して、天の恵みに感謝する行為を定期的に行い、地域の皆さんのために祈る(地域住民の役割:自然との調和・無償の愛)
資本主義経済になる前は、個人的使命があれば充分だったのかもしれません。しかし、現代はお金をかせがないと生活できないので、社会的使命のほうが優先順位が高くなります。しかし、実際は、社会的使命と個人的使命のバランスが取れてこそ、幸福度の高い人生と言えるのではないでしょうか。個人的使命を意識できると、「仕事」と「プライベート」のバランスも取りやすくなります。この個人的使命は、最後におまけのように書き加えていますが、実は、生きがいに大きく関わるものだと感じています。
地域の中での「役割」があることが、長寿の秘密の一つであることは、間違いなさそうです。というのも、私の住む玉城集落においても、集落行事が月に1〜2回あり、地域住民には役割が与えれれます。農耕文化の名残で、自然の恵みの感謝するお祝いごとが多く、綱引きや獅子舞など盛大に行われます。三線を弾く、法螺貝を吹く、ドラを鳴らす、太鼓を鳴らす、唄を歌う、踊るなど、にぎやかです。そこで、芸を披露した後、みんなに「上手だったね、かっこよかったね」と言われるのが精神的にとてもいいようです。芸能となると舞台に登場するおじいが、「褒められるとさ自己肯定感が上がるんだよ〜。緊張感がいいんだよね。生きてる感じがしてさ〜」と、言ってました。実際、すごい上手なので、見ている方も本気で楽しんでいます。
私は、区長さんと一緒に御願所を周り、御嶽でお祈りする集団に立候補して、一緒にお祈りさせていただいてます。私が好きなのでやっているのですが、区長さんや地域の方から「お祈りしてくれてありがとう」とお礼を言われると、やはり嬉しいものです。それが、コミュニケーションのきっかけにもなり、地域で楽しく暮らす要素にもなっています。料理の上手な人は、お祝いごとで食べ物の差し入れをして、みんなから「上手だね、おいしかったよ」と言われれば、自己肯定感も上がります。区報で寄贈者として名前が書かれるのも、ちょっとした誇りになるでしょう。自分の住む地域の中で役割が与えらているだけで、幸福度は上がるもの。誰かの役に立てる場が設けられている王朝時代からの集落の在り方そのものが、沖縄の財産であると感じます。
⑦「使命」を軸に「現実社会のニーズ」と「報酬の得られること」の接点にある「天職」があなたの理想の仕事【社会】×【社会】
「天職」は、「現実社会でニーズのあること」と「報酬の得られること」の接点にあります。しかし、自分のことをよく見る前にこの2つを掛け合せてしまうと、自分軸がないまま成立してしまいます。特に「現実社会でニーズのあること」は、自然環境のようなもので、自分ではコントロールできません。変化も激しい世界なので、軸がないと振り回されてしまいます。まず自分の内側を理解し、自分で決められることは自分で決めた上で選択肢をいくつか準備する必要がありました。しっかりと自分軸を定めた上で、最後に「現実社会でニーズのあること」と「報酬の得られること」で、「天職」を絞り込んでいきます。
「天職」を見つけ出すのは、最後の作業です。これまでの1~6までのプロセスをとばして、ここから社会人生活をスタートしている人も多いかもしれません。④「天職」の枠は、【社会】×【社会】という構造なので、自分の外側でつくられている世界ですが、すべての結果を総合的にみて最後に決める部分です。
「好きなこと」「得意なこと」を仕事にした人たちが陥りがちなのが、やりたいことができていることに満足し、現実社会のニーズを考えず、自分のやりたいことだけを優先してしまうことです。「好きなことを得意なやり方で仕事にすると、何に困っている人たちにどのように役に立てるのか」を考えてみましょう。自分の内側の答えは出ているので、一度、お客様のことだけ考えてできることをリストアップし、絞り込んでください。時代は常に流れており、社会的ニーズとは変化の激しい世界です。常に軸は自分の中心に定めて、時代の流れとの共通点を探していく必要があります。社会の変化は自分でコントロールできない分、時代を見る目はいつも輝かせおくが必要があります。「使命」を軸に、「現実社会でニーズ」のあるキーワードの数値を調べてリストアップしたら、「専門職」で絞り込んでみましょう。どんな仕事が浮かび上がってくるでしょうか。
「生きがい」探しのポイントまとめ
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。長文でしたが、あなたの「生きがい」は、見つかりそうでしょうか。それぞれの要素を見つけ出すには、自分に問いかけ、内観する時間が必要です。是非、今一度ご自身に問いかけていただく時間をお取りいただければと思います。最後に、生きがいを見つけるためのポイントをお伝えします。
順番を間違えない「自分➡社会」
「生きがい」の見つけ方7ステップを実践するポイントは、「順番を間違えない」ことです。まず、自分の内側を見て、内側を理解してから、内側と重ね合わせながら外側の社会を見ていきます。先に外側から考えてしまうと、他人軸で人生を決めてしまいがちですのでお気をつけください。
「価値観」「好きなこと」「得意なこと」は、もともと自分の中にあるものなのです。作業としては、内観し「内側に持っているものを引き出す」だけです。しかし、自分のことはよくわからないものです。「価値観」「好きなこと」「得意なこと」を見つけ出すための質問は、八木仁平さんの著書『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』(KADOKAWA, 2020)にも書かれているので、是非参考になさってください。
「報酬が得られる」というだけであれば、アルバイトや就職で経験することは難しくありません。努力と時間を必要とするのは、「得意なこと」と「報酬が得られること」が重なり合う「職務的専門」を生み出すところです。土台を築くだけで5年から10年くらいでかかるしょう。フロリダ州立大学のエリクソン博士の「10,000時間の法則」という考え方があります。 1つの分野でプロレベルになるには約10,000時間の練習を必要とするという内容です。1日3時間で10年、1日6時間で5年かかる計算です。私もこの考え方には同意します。様々な分野のプロと話していても「10年やってようやく一人前」という意見は、実際によく聞きます。闇雲に資格をとっても意味がありませんから、自分の価値観と得意を見つけて、絞り込んでいくことが大切です。
「専門職」を得ている実感のある方で「何かが違う」と感じている場合、「得意なこと」には気づいているでしょう。専門性を身につけるには、難易度も高い上に時間もかかりますから、能力がないと続けるのが難しいからです。仕事の能力は高いし、収入も得られているけど、精神的に「苦しい」と感じていたら、生きがいを見つける7ステップの1番目から、見つめ直してみてください。価値観、好き、使命のどれかが、抜け落ちていることに気づいたら、足りないところを補って、今一度「天職」を見つめ直す機会を得られます。
東道里璃 (とうどう りり)
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