「風水」という言葉はとても範囲が広く、どこにフォーカスしてお話するかで全く別の世界になります。この記事では、風水の全体像と、私たちが日常でもできる風水実践法がどんなことかをお伝えします。

風水学の全体像

「風水」という言葉は、様々な意味を含んでいます。

・占いか、環境学か

・陰宅か、陽宅か

・土地か、間取りか、インテリアか

占いか、環境学か

「風水」というと、まず、「占い」と思う方が多いでしょう。日本への風水伝来の歴史をたどると、602年に日本へ来航した百済出身の僧侶観勒(かんろく)により、天文、暦本、陰陽五行がもたらされたといいます。日本の陰陽道では、占いをするのも地相を見るのもどちらも国家公務員である陰陽師の仕事でした。

日本では、特に、呪術などの占い的要素が強くなっていきました。一方、琉球には、14世紀に中国福建から移民した久米三十六姓により、風水が伝来しました。琉球王国では、王城、集落、住宅、お墓など、自然環境と都市や建物が調和することを重視する「環境学」としての風水が、最先端科学として、王府の政策に取り入れられました。

風水鑑定を行うのは、風水看(ふんしーみー)と呼ばれる役職で、王府の国家公務員であり、男性の仕事でした。祈りや占い的な仕事は、祈りを担当する女性神職「ノロ」の役割でした。こちらも強い権力を持つ国家公務員でした。

現在の沖縄にも様々な風水のかたちがありますが、琉球王朝時代の政策として使われたのは、「環境学」としての風水術です。自然との調和を重視して、風水理論を政治的に利用していきました。

私が琉球風水師として主に扱っているのは地の氣を見る「環境学」ですが、天体の動きを無視して環境学は存在しません。また、「占い」は仕事としてはやりませんが、四柱推命などの天運についても基礎知識として学んでいます。さらに、祈りと風水も密接な関係にあります。

目には見えない宇宙エネルギーに対して感度が上がっていくと、どれも無視できるものではなく、全てが関連しあいつながっていることに気づきます。

しかし、いずれも専門性が高いためそれぞれ得意分野があり、私は「環境学としての風水」を選びました。「環境学としての風水」の中でも、陰宅か、陽宅か、2つに分かれます。続いて、陰宅と陽宅について、お話しましょう。

陰宅と陽宅

「陰宅」とは、なくなった方の家=お墓

「陽宅」とは、生きている人の家=住宅

琉球王国では、陰宅も陽宅も風水看が見ていました。

ここでは、陽宅の風水について、見ていきます。陽宅の風水を見るには、大きく3つのカテゴリーがあります。それは、土地、間取り、インテリアです。

土地、間取り、インテリアの風水

風水で多くの方が氣にされるのは「間取り」ですが、土地と間取りは大きく関係しています。良い間取りで建てたいのであれば良い立地を選ぶ必要あり、「間取りは立地で決まる」といっても過言ではありません。よって、環境学としての風水で最も重要なのは「土地」です。

しかし、土地のご相談いただくケースは稀で多くの方が、間取り図が出来上がってから、家が建ってからご相談されることがほとんどです。間取りが変えられない状況でできる風水は「インテリア」です。

ただし、インテリアのフルリフォームをするとなれば家が一度建ってからではできるタイミングも限られています。施工が終わったばかりの新築の状態で風水鑑定を行い、壁紙の色が風水と合っていない、家具のサイズが風水的に良くなかったとわかっても新品を全て手放してリフォームする方はいらっしゃないからです。賃貸住宅もインテリアを自由に楽しむのは難しいでしょう。

よって、大幅なリフォームをしなくてもできる置物の置き方、カーテンの色の選び方掃除片付けのノウハウが手軽に誰でもできるように情報も単純化され、風水の実践法として人気があります。

私の著書『風水空間デザインの教科書』では、風水哲学、風水理論、土地、建物、インテリアのデザインまでの風水術を一気通貫で書きました。これば、新築、リフォームする方向けの内容です。

東道里璃著『風水空間デザインの教科書』(ガイアブックス)

風水インテリアを楽しみたいのであれば、DIY賃貸可能な物件やリフォームしてない中古物件がおすすめです。なかなか出てこないので難しいですが、狙いを定めていれば、必ず見つかります。

琉球王朝時代の風水

琉球王朝時代の風水に、「どこどこの方位に何色がいい」という、八方位鑑定や五行の相性に基づいたインテリア風水は見ることができません。王府が政策に取り入れていた風水思想と全く関係がないとは言いませんが、風水の活用範囲が異なります。

五行論が政治的使われた記録は、王府の三司官(総理大臣のようなポスト)であった蔡温(さいおん)が行った名護の羽地大川の改修工事です。川の流れるラインを五行の「水」の形と相性が合うように、「金」形と「水」形で調え、相性の悪い「土」形、「火」形の形を変えていきました。

陰陽五行、四神相応などの風水哲学は、考え方の軸となるもので宇宙のあらゆる事象に当てはめることができます。眼の前にある問題を風水哲学の視点で捉えてみると、新たな発見があるかもしれません。

アイキャッチ画像の写真は羽地大川ではなく、台湾上空からの写真です。風水では、川のカーブの内側に良い氣がとどまるとされています。この考え方は、琉球王朝時代には集落の設計に用いられました。物や人の流れをつくる「道路」は、「川」と同じ役割を持ちます。道路を丸くカーブさせ、その内側に集落がすっぽり入るように設計されています。昔の集落の絵図面の中に、「玉帯水」という文字を見ることができ、風水の形勢法を使って集落の設計をしていたことがわかります。

風水空間プロデュース講座 2025年4月開講

ロンジェ琉球風水アカデミーの2025年度「風水空間プロデュース講座」は、2025年2月3日(月)23:10立春より、お申し込み受付開始します。

風水哲学を空間デザインで表現したい不動産オーナーのための講座です。​不動産プロデュースにおいて、建築・インテリアの専門家に適切な要望やディレクションを出すための​風水コンセプト設計力、及び、専門家とのコミュニケーション能力を磨きます。​陰陽五行哲学を、ライフスタイルの中で実践を通して体得していきます。​

ご興味のございます方は、詳細をこちらよりご確認ください。

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琉球風水研究者/風水空間デザイナー®/ロンジェ琉球風水アカデミー学長/沖縄国際大学非常勤講師 沖縄の伝統文化としての「琉球風水」を専門とする研究者。 首里城をはじめとする歴史的建造物や都市景観に見られる風水思想を、学術文献、漢文資料(『使琉球録』など)や発掘調査報告をもとに検証し、琉球王国の空間構造と自然観・世界観を、歴史文化の視座から紐解く研究を行っている。 立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科修了(修士)。現在、沖縄国際大学経済学部地域環境政策学科にて、これから世界へ羽ばたこうとする学生を対象に、琉球風水・地域文化、異文化コミュニケーションを学ぶ「グローカルセミナー」を講義。 また、琉球風水の知見を現代空間に応用する専門家「風水空間デザイナー®」としても活動し、主宰する「ロンジェ琉球風水アカデミー」では実践と学術をつなぐ教育を展開している。 2022年には著書『風水空間デザインの教科書』(ガイアブックス)を出版。 さらに、首里城復興イベント「木曳式」では、沖縄県より公式認定を受けイベントを開催し、60秒イメージ映像を制作。沖縄タイムスなどの新聞・雑誌への寄稿や講演活動を通じて、琉球風水の文化的価値と現代的意義を広く発信している。 東京都世田谷区出身で、かつてはJARTIC日本道路交通情報センターでキャスターを務めた経歴も持つ。趣味はスクーバダイビングとトレッキング。自然と対話しながら、土地の「気」を感じる時間を大切にしている。