出典:那覇市歴史博物館所蔵(『中城御殿御敷替御普請日記』原本表紙)

「この人生を終える前に、中城御殿の風水を解き明かしたい」 そんな想いに突き動かされ、私は今、ある一冊の古文書と向き合っています。

那覇市歴史博物館に所蔵されている一次史料、尚家文書501『中城御殿御敷替御普請日記(なかぐしくうどぅんおしきがえごふしんにっき)』。 2026年秋、首里城正殿とともに一部開園を控える「中城御殿(世子の住まい)」の移設にまつわる、風水鑑定と普請(建築)の生々しい記録です。

中城御殿とは何か:継承される王国の精神

中城御殿は、琉球王国の世子(跡継ぎ)の邸宅でした。 1879年の廃藩置県の際、国王一族が首里城を去った後の住まいとなり、首里城で行われていた国家祭祀もこの場所で引き継がれました。

沖縄戦で惜しくも焼失し、戦後は県立博物館などが置かれてきましたが、いよいよ2026年、その姿が再び私たちの前に現れます。

中城御殿御敷替御普請日記 翻刻・翻訳記事一覧(目次)

本ページでは、『中城御殿御敷替御普請日記』の翻刻・翻訳記事をまとめています。『中城御殿御敷替御普請日記』には、風水鑑定内容と行政的な覚書が含まれています。本ブログでは、全299丁の中から、風水鑑定の内容(101丁)にフォーカスして翻刻・翻訳を行い、琉球王国の空間哲学を読み解きます。

■ 目次(リンク付き)

国王から風水確認の命(行政的覚書)
  • 第1丁〜7丁左|表紙・行政覚書(翻刻・翻訳予定なし)
琉球の風水看(3名)による、中城御殿の風水鑑定報告書
  • 第7丁-第8丁|【鄭良佐】(旧)中城御殿地理記1 (翻刻・翻訳開始)
  • 第9丁|【鄭良佐】(旧)中城御殿地理記(旧)2
  • 第10丁右|【鄭良佐】(旧)中城御殿地理記3 署名欄:同治六年丁卯3月朔日(1867年)
  • 第10丁左-第16丁|【鄭良佐】(新)中城御殿地理記 署名:鄭良佐(日付なし)
  • 第17丁-第21丁|(新)宅有三要 提案絵図面 署名:鄭良佐・丁卯9月
  • 第22丁-第25丁|(旧)(新)中城御殿風水鑑定 何廣憙曰頻出 (署名・日付なし)
  • 第26丁-第28丁|(旧)中城御殿風水鑑定 署名 上運天里之子親雲上(日付なし) 
  • 第28丁-第36丁|(旧)中城御殿風水鑑定  第33丁:署名 神山里之子親雲上・卯年6月
福建・何廣憙と琉球の風水看・鄭良佐の玉陵風水鑑定報告書
  • 第36丁-第39丁|玉陵地理記 署名:何廣憙 道光28年孟夏(4月)1948年
  • 第40丁-第41丁|絵図面と解説
  • 第41丁-第43丁|玉陵地理記 中央・東・西の建物の坐向と門
  • 第44丁-第46丁|玉陵地理記 巒頭鑑定 署名:鄭良佐 丁卯6月 
琉球の風水看(3名)の鑑定に対しての行政的覚書
  • 第41丁-第62丁|覚書 卯年(翻刻・翻訳予定なし)
  • 第62丁-第65丁|覚書 辰年(翻刻・翻訳予定なし)
福建の風水師による風水鑑定報告書・玉陵地理記
  • 第65丁-第75丁|【福建風水師】中城御殿地理記 同治7年孟夏 何廣憙 何廣憙長男 何廣憙門徒 (辰1868年)
  • 第75丁|【福建風水師】中城御殿地理記 同治7年孟夏 正五品 
  • 第76丁-第78丁|【福建風水師】中城御殿地理記 図面
  • 第78丁-第86丁|【福建風水師】玉陵地理記 何廣憙長男 何廣憙門徒 正五品
  • 第87丁|【福建風水師】玉陵地理記 図面
琉球風水看からの質問と福建の風水師からの回答
  • 第88丁-第91丁|【琉球風水看】中城御殿・玉陵の質問 署名なし
  • 第91丁-第95丁|【福建風水師】回答 何廣憙長男 何廣憙門徒 正五品 同治7年孟夏
  • 第96丁-第104丁|【琉球・蔡大えい】中城御殿・玉陵の質問 同治6年丁卯9月
  • 第104丁-第105丁|【琉球・蔡大えい】首里城鑑定の羅盤図
  • 第105丁-第109丁|【琉球・蔡大えい】蔡温の首里城風水鑑定複写
  • 第109丁-第115丁|【福建風水師】回答 何廣憙長男 何廣憙門徒 正五品 同治7年孟夏
  • 第114丁-第116丁|【琉球風水看・上運天里之親雲上】中城御殿・玉陵の質問 日付なし
  • 第91丁-第95丁|【福建風水師】回答 何廣憙長男 何廣憙門徒 正五品 同治7年麥沃(←禾偏)5月頃 
行政的覚書
  • 第118丁-第135丁|覚書 辰年(1868年)(翻刻・翻訳予定なし)
  • 第136丁-第154丁|覚書 巳年(1869年)(翻刻・翻訳予定なし)
  • 第155丁-第162丁|覚書 午年(1870年)移設決定(翻刻・翻訳予定なし)
  • 第163丁-第178丁|覚書 未年(1871年)(翻刻・翻訳予定なし) 
  • 第179丁-第211丁|覚書 申年(1872年)(翻刻・翻訳予定なし) 
  • 第212丁-第240丁|覚書 酉年(1873年)着工(翻刻・翻訳予定なし)
  • 第241丁-第288丁|覚書 戌年(1874年)3月竣工 3/13嘉味田親方 門入 3月朔日に大量のサイン(翻刻・翻訳予定なし)
  • 第289丁-第299丁|覚書 亥年(1875年)(翻刻・翻訳予定なし)

更新予定

  • 週1本程度を目安に翻刻・翻訳記事を公開(1か月に4本前後)
  • 可能であれば週2本更新も目指しており、2026年秋までに91丁分の翻刻・翻訳を完了予定

※翻刻・翻訳記事は随時更新され、最新の解釈にアクセスできます。

まず始めに、移設の背景や鑑定の核心部分を凝縮したコラムから

この『中城御殿御敷替御普請日記』に記された膨大な記録のうち、移設の背景や鑑定の核心部分を凝縮してまとめたものが、2026年1月4日に掲載されたタイムス住宅新聞の年始特集コラムです。これから始まる詳細な翻刻・翻訳の連載を読み進めていただくための「地図」として、まずはぜひこちらの記事を先にご覧ください。

▼タイムス住宅新聞 特集コラム(WEB版外部サイト)

理(ことわり)と美の風水史|中城御殿・移設の謎に迫る

2026年1月4日発行のタイムス住宅新聞・年始特集「理(ことわり)と美の風水史」の紙面。首里城や中城御殿のイラストと共に、琉球文化空間デザイン研究所代表・東道里璃の解説コラムが掲載されている様子。

(出典:沖縄タイムスの住宅専門紙『週刊タイムス住宅新聞』 2026.1.4. 18-19面. タイムス住宅新聞社)

一次資料の翻刻と風水的解釈を加えた翻訳について

本ブログでは、『中城御殿御敷替御普請日記』の一次史料を翻刻・翻訳し、風水的解釈を添えてお届けします。翻訳にはAIを補助的に使用していますが、AIによる推測は排除し、辞書に基づく表層的な意味の確認に限定しています。逐語訳の最終判断や、風水的解釈を含む意訳(解釈的翻訳)は、東道里璃による判断で行っています。

翻訳のプロセス

  • OCRによる漢字抽出
    那覇市歴史博物館のデジタルミュージアムの画像から、OCRで読み取れる漢字を抽出します。
  • 翻刻
    原史料画像に基づき、原書の行構造を忠実に再構成。原典との照合は、一文字ずつ手作業で確認しています。
  • 逐語訳(表層的翻訳)
    白文に句読点を付与して翻訳。句読点の付与および文法構造の解説にはAIを下訳の段階で補助的に使用しています。
  • 意訳(解釈的翻訳)
    風水専門書と照らし合わせ、風水的な解釈を添えて翻訳します。
  • 解説
    本文の歴史的背景や風水的意味を補足します。

翻訳におけるAI使用の明示について

翻訳のプロセスでは、逐語訳においてAIのスピードを生かし、下訳の助手として利用しています。その上で、複数の意味を持つ表現について「固有名詞」「隠語」「歴史的背景」などを踏まえ、最も適切な意味を選ぶ作業を東道里璃が担当します。さらに、専門的解釈によるファクトチェックを行い、最終的な逐語訳を決定しています。

※本翻訳は現在進行中であり、解釈には不確定性が含まれる可能性があります。見解や校訂の提案は歓迎いたします。

探究の第一歩として

本プロジェクトの背景や、私の執筆への想いについては、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

▼ブログ内関連記事(活動報告)

【メディア掲載】タイムス住宅新聞・年始特集「理(ことわり)と美の風水史」掲載のご報告

『中城御殿御敷替御普請日記』の本文、その一文字一文字を紐解いてまいります。

主要参考文献リスト

古地図・史料

  • 「首里古地図」. 沖縄県立図書館蔵 CC BY 4.0
  • 安里進(編) (2014).『近世測量絵図のGIS分析』. 古今書院
  • 琉球王国評定所. (1867–1875). 『中城御殿御敷替御普請日記』(尚家文書501号). 那覇歴史博物館デジタルアーカイブ

風水関連

  • 何暁昕(かぎょうきん). 三浦國雄(監訳). 宮崎順子(訳)(1995).『風水探源』. 人文書院.
  • 山道帰一 (2009).『完全定本【実践】地理風水大全』. 河出書房新社.
  • 陳碧霞(チェン ビシャ)(2019).『近世琉球の風水と集落景観』. 榕樹書林.
  • 都築晶子(1999).「蔡温の風水思想–「首里地理記」の景観論とその展開」『竜谷史壇』 (通号 111).p.26~56.
  • 仲間勇栄(2017).『蔡温と林政八書の世界』. 榕樹書林.
  • 目崎茂和(1998).『図説 風水学―中国四千年の知恵をさぐる』.東京書籍.
  • 渡邊欣雄(1994).『風水気の景観地理学』. 人文書院

中城御殿関連調査

  • 池田 孝之(編)(2012).『首里城公園管理センター調査研究・普及啓発事業年報№2(平成22年度号)』.財団法人海洋博覧会記念公園管理財団 首里城公園管理センター.
  • 沖縄県立埋蔵文化財センター(編) (2022).首里当蔵旧水路 龍潭線街路整備に伴う発掘調査報告書 沖縄県立埋蔵文化財センター調査報告書第106集.沖縄県立埋蔵文化財センター.
  • 沖縄県立埋蔵文化財センター. (2023). 中城御殿跡 沖縄県立埋蔵文化財センター調査報告書第調査報告書114集.沖縄県立埋蔵文化財センター.
  • 高良倉吉. (2018). 「尚泰王末期の風水動向の一端」. 琉球アジア文化論集

文化・民俗・景観

  • 金田 章裕(2012).『文化的景観:生活となりわいの物語』. 日本経済新聞出版
  • 仲松弥秀(1978).『古層の村―沖縄民俗文化論』. 沖縄タイムス社
  • 柳宗悦(1986).『柳宗悦民藝紀行』. 岩波書店
  • 湧上元雄(2002).「沖縄民俗文化論 : 祭祀・信仰・御嶽」. 榕樹書林.

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

引き続きアップデートしてまいります。


「古文書にも刻まれた琉球風水の知恵を、あなたの住まいへ。」

150年前の普請(建築)に宿る空間原理を、現代の暮らしに翻訳するための特別資料をご用意しました。
首里城の風水景観を語る特別映像や、古の知恵を「現代の安寧」へと繋ぐための「氣の流れ」を可視化する「240の指標」を、以下のインビテーション(招待状)よりお受け取りください。

琉球王宮の空間原理を公開する特別資料への招待状。首里城の風水講義映像と、住まいの氣の流れを診断する実用チェックシート(PDF・解説動画)の提供案内。東道里璃の署名入り。

「この研究に基づく実践と、社会的な活動実績についてはこちら」
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琉球風水思想・文化的景観・環境地理学の研究者。 立教大学大学院 異文化コミュニケーション学修士。 沖縄国際大学 経済学部 地域環境政策学科 非常勤講師。 琉球文化空間デザイン研究所 代表。 ロンジェ®琉球風水アカデミー 学長。 研究活動では、首里城・中城御殿・伝統的風水集落の調査や史料翻刻を通して、琉球王国における空間思想や自然観を研究している。 教育事業としては、風水とインテリアコーディネートを好む感度の高い女性を中心に、暮らしと空間をととのえるための講座を展開している。 さらに専門的に学びたい方に向けて、琉球風水の思想をベースにした風水空間デザイナー®資格講座も開講している。 著書『風水空間デザインの教科書』(ガイアブックス)。