「琉球民家の造り-自然と調和する琉球風水」

ロンジェ琉球風水アカデミー、学長の横川明子です。
沖縄の伝統古民家を、琉球風水の視点から解説しています。

新築住宅を設計する場合、琉球民家のゾーニングの考え方は、現代住宅にも応用ができて、快適な家づくりにつながります。琉球風水の最大の特徴は自然との調和を大切にすること。そして、現実的に暮らしに役立つ実学であり、感性的価値をも重視する美学です。今回は、王朝時代の民家の造りから、琉球風水を解説します。

理想的な地勢と方位

王朝時代は、国造り、集落の形成、家造りと、一つの風水理論を国単位から個人の住宅単位まで、入れ子構造で取り入れていました。そのため、個人宅においても、どの家もが風水的に良い立地で建てられていました。風水で理想とする地勢は、背後に山があり、前方は広く平らで開けていること。方角的には、背後が北側、前面が南側を向くのを良しとします。琉球民家も、これを基本としています。そして、季節風の向き、太陽の方角、台風の影響など、沖縄独特の気象条件の中で、安全で心地よく暮らせることが配慮されました。

左右で公私を分ける

住宅の空間を機能的に分ける方法としても風水が使われています。ヒンプンの右側は、男性とお客様が出入りする来客空間への動線です。母屋の前面であるパブリック空間を表座といい、東側(右側)から一番表座、二番表座、三番表座としました。一番座が客間、二番座は仏間、三番座は居間として使われていました。

ヒンプンの左側は、女性や子供たちが出入りする家族空間への動線です。このプライベート空間には、井戸、かまどやトイレなどがありました。母屋の奥のエリアは、裏座とよばれ、寝室、子供部屋や産室になっていました。このように、当時の人々の生活様式に合わせて、住宅の間取り配置は、機能的にできていました。

現代の住宅事情とは大きな違いもありますが、自然と調和する琉球風水の知恵を読み解くことで、そのエッセンスを今の時代に活用することは可能です。琉球風水の具体的実践法については、これからのコラムで、各部屋別に解説をします。

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琉球風水研究者/ロンジェ®琉球風水アカデミー学長 立教大学大学院修士(異文化コミュニケーション)。 沖縄国際大学経済学部地域環境政策学科 非常勤講師。 首里城や風水集落を通して、琉球王国の自然観と空間思想を研究。 ロンジェ®琉球風水アカデミーでは、風水×テーブルコーディネートを融合した講座を主宰し、伝統と現代をつなぐ実践教育を展開。 著書に『風水空間デザインの教科書』(ガイアブックス)。