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当研究所代表の東道里璃が、2026年6月28日に沖縄文化協会「2026年公開研究発表会」におきまして研究発表を行いましたのでご報告いたします。
発表要旨
19世紀琉球の中城御殿移築における風水思想と空間形成
― 『中城御殿御敷替御普請日記』の分析を通して ―
東道里璃
はじめに:研究の背景と目的
これまでの風水研究は、歴史学・文化人類学・農学・建築学など複数の分野において蓄積され、風水思想と琉球における空間形成や自然環境との関係について解明が進められてきた。しかし、風水に関する文字史料の記述と実際の空間との対応関係を検証した研究は限られている。 本研究は、琉球王国の世子の居所である中城御殿移築に関する一次史料尚家文書501『中城御殿御敷替御普請日記』を対象とし、文字史料の記述とGISによる空間情報との整合性を検証した。さらに、風水判断の空間的特徴の定量化を試みた。
研究手法
研究手法は、デジタル・ヒューマニティーズ的手法を用い、空間分析による史料批判を行った。史料は、AIによる翻刻結果を原史料と照合し、LLMを補助的に活用して読解した。空間分析の地形データには国土地理院の5mメッシュDEMを用い、GIS(QGIS)上で処理した。断面図作成により、地形の距離・標高・勾配を定量化した。 分析対象は、本史料のうち、中城御殿の移築地選定に関わる中国福建省の知識人・何廣憙の風水鑑定が記された第65丁から第76丁である。地形を評価する巒頭法と方位を評価する理気法の双方が記されているが、本研究では巒頭法に着目し、「高い」「低い」「遠い」等の地形表現について、その地形的実態をGISで検証した。
分析結果:遠景スケールと近景スケールの検証
分析の結果、史料記述は、広域的な地形環境と対応しており、遠景スケールにおいて文字史料の記述と実空間との整合性が認められた。『喜宅後有遠山』『北方又有髙山』は、中城御殿より北後方約1kmに、標高108mの末吉の森が確認できた。『大河環繞』は、真嘉比川が1.7kmの包囲幅で中城御殿を取り囲んでいることが確認できた。 一方、『南高北低』の記述については、現状の敷地内地形との一致は確認できず、近景スケールでは史料記述との間に差異が認められた。この差異には近現代における造成の影響が考えられる。そこで、比較的自然地形を保持していると考えられる敷地東端の石垣に隣接した南北方向の小路について分析したところ、史料記述と同様の「南高北低」の地形が確認された。 遠景の高地や河川の包囲範囲を検討した結果、何廣憙が評価した風水景観は、中城御殿を中心とする概ね2~3km圏の空間を対象としていた可能性が示された。
考察と今後の展望
以上より、本研究では、敷地内部で造成の影響を受けたと考えられる箇所を除き、風水鑑定記録の記述と地形との整合性を確認することができた。また、風水判断の対象となった景観スケールの一端を明らかにした。 今後は、山・道・川などによって構成される風水景観の構造分析を進めることで、地形に付与された風水的意味の解明を試みたい。なお、本研究は巒頭法に関する分析であるが、実際の風水鑑定は理気法との併用によって行われるため、今後は方位情報を含めた総合的な検討が必要である。
以上、発表報告でした。
なお、2026年度公開研究発表会・発表要旨集も公開されております。
琉球文化空間デザイン研究所では、学術的な裏付けに基づいた精緻な調査・研究を土台に据えながら、現代における空間デザインや、多良間島での琉球風水集落の観光ツアー造成(多良間島観光コンテンツ支援事業)などの実践的な地域文化事業を展開しております。
これからも、沖縄の歴史的空間が持つ本質的な価値を現代によみがえらせ、持続可能な地域づくりや文化観光への貢献を目指してまいります。
東道里璃 (とうどう りり)
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