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2026年5月30日(土)・31日にせとうち観光専門職短期大学(香川県高松市)にて開催された「2026年度 歴史地理学会第69回大会」におきまして、当研究所代表の東道里璃が研究発表を行いましたのでご報告いたします。

2026年度 歴史地理学会第69回大会・総会プログラムはこちら

歴史地理学会は歴史地理学分野における国内の主要な学術大会であり、当日は多くの大学研究者や専門家が参加されました。

歴史地理学会の会場となったせとうち観光専門職短期大学の校舎前

発表の概要

  • 発表タイトル: 19世紀琉球の中城御殿移築における風水思想と空間形成 —『中城御殿御敷替御普請日記』の分析を通して—
  • 発表者: 東道里璃(琉球文化空間デザイン研究所)
  • 使用史料: 尚家文書501『中城御殿御敷替御普請日記』(那覇市歴史博物館所蔵)

主な研究成果と考察

これまでの琉球風水研究は、歴史学・文化人類学・農学・建築学など複数の分野において蓄積され、風水思想と琉球における空間形成や自然環境との関係について解明が進められてきました。しかし、風水に関する文字史料の記述と実際の空間との対応関係を検証した研究は限られています。

本研究は、琉球王国の世子の居所である中城御殿移築に関する一次史料を対象とし、文字史料の記述とGISによる空間情報との整合性を検証したものです。さらに、風水判断の空間的特徴の定量化を試みました。

1. 研究手法と分析対象

研究手法にはデジタル・ヒューマニティーズ的手法を用い、空間分析による史料批判を行いました。史料はAIによる翻刻結果を原史料と照合し、LLMを補助的に活用して読解しています。空間分析の地形データには国土地理院の5mメッシュDEMを用い、GIS(QGIS)上で処理して断面図を作成し、地形の距離・標高・勾配を定量化しました。

分析対象は、本史料のうち、中城御殿の移築地選定に関わる中国福建省の知識人・何廣憙(かこうき)の風水鑑定が記された第65丁から第76丁です。地形を評価する「巒頭法(らんとうほう)」と方位を評価する「理気法(りきほう)」の双方が記されていますが、本研究では巒頭法に着目し、「高い」「低い」「遠い」等の地形表現について、その地形的実態をGISで検証しました。

2. 分析結果:遠景スケールにおける整合性と景観スケール

分析の結果、史料記述は広域的な地形環境と対応しており、遠景スケールにおいて文字史料の記述と実空間との整合性が認められました。

  • 『喜宅後有遠山』『北方又有髙山』:中城御殿より北後方約1kmに、標高108mの末吉の森が確認できました。
  • 『大河環繞』:真嘉比川が1.7kmの包囲幅で中城御殿を取り囲んでいることが確認できました。

一方、『南高北低』の記述については、現状の敷地内地形との一致は確認できず、近景スケールでは史料記述との間に差異が認められました。この差異には近現代における造成の影響が考えられます。そこで、比較的自然地形を保持していると考えられる敷地東端の石垣に隣接した南北方向の小路について分析したところ、史料記述と同様の「南高北低」の地形が確認されました。

遠景の高地や河川の包囲範囲を検討した結果、何廣憙が評価した風水景観は、中城御殿を中心とする概ね2〜3km圏の空間を対象としていた可能性が示されました。

3. 結論と今後の展望

以上より、本研究では、敷地内部で造成の影響を受けたと考えられる箇所を除き、風水鑑定記録の記述と地形との整合性を確認することができました。また、風水判断の対象となった景観スケールの一端を明らかにしました。

今後は、山・道・川などによって構成される風水景観の構造分析を進めることで、地形に付与された風水的意味の解明を試みたいと考えております。なお、本研究は巒頭法に関する分析ですが、実際の風水鑑定は理気法との併用によって行われるため、今後は方位情報を含めた総合的な検討が必要です。

今後の展望と活動への還元

当研究所では、沖縄県の補助事業である「沖縄観光コンテンツ支援事業」において、多良間島における琉球風水集落の観光ツアーの造成といった実践的な地域文化事業を手がけるとともに、その基盤となる学術的・歴史的背景の解明にも真摯に取り組んでおります。

今後は、沖縄の歴史的遺産である中城御殿に関する事業をはじめ、学術的研究成果を現代の空間デザインや文化観光の現場へしっかりと還元してまいります。研究者としての厳密なアプローチを大切にしながら、建築家とのコラボレーションや各種プロジェクトを展開してまいりますので、引き続きご期待ください。

参考文献

東道里璃 (2026). 19世紀琉球の中城御殿移築における風水思想と空間形成 —『中城御殿御敷替御普請日記』の分析を通して—. 2026年度歴史地理学会第69回発表資料集, 歴史地理学会, pp.96-99.

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琉球文化空間デザイン研究所 代表|歴史地理学会・沖縄文化協会会員。 ロンジェ®琉球風水アカデミー 学長|久高島区長認定ガイド。 株式会社ロンジェ 代表取締役 研究分野:風水思想・文化空間論。 専門:琉球風水(近世琉球の空間設計思想)。 立教大学大学院 異文化コミュニケーション学修士。 沖縄国際大学 経済学部 地域環境政策学科 非常勤講師(2024~2025年)。 研究活動では、首里城・中城御殿・伝統的風水集落の調査や史料翻刻を通して、琉球王国における空間思想や自然観を研究している。 教育事業としては、風水とインテリアコーディネートを好む感度の高い女性を中心に、暮らしと空間をととのえるための講座を展開している。 さらに専門的に学びたい方に向けて、琉球風水の思想をベースにした風水空間デザイナー®資格講座も開講している。 著書『風水空間デザインの教科書』(ガイアブックス)。