「もっと自分らしく働きたい」──
「成果ばかりを追う働き方・生き方に、どこか違和感がある」。
そんな想いを心の奥に抱えながら、仕事に向き合う日々…。

私たちはときに、無意識のうちに「他人軸」に流され、自分の価値観やペースを見失ってしまうことがあります。
けれど、誰もが自分の中に、“自分らしい軸”が静かに息づいているはずなんです。

この記事では、古代中国から伝わる陰陽の知恵をヒントに、「自分軸」で生きるとはどういうことか。
そして、働き方・生き方における陰陽バランスとは何かを、図解を交えてひも解いていきます。

はじめに、私が出会った
陰陽の考え方を経営に取り入れている女性経営者の実例からご紹介します。
きっとあなたのこれからのヒントにつながるはずです。

働き方にも生き方にも、自分らしく、しなやかな強さを。
陰陽哲学が、あなたの軸を見つめ直す静かなきっかけになりますように

出会い:自分サイズの美しい経営陰陽バランスが導くしなやかさ

決め手は「空間の写真」だった

新しい土地に引っ越して間もない頃のこと。
そろそろ髪を整えたいと思いながらも、なかなか美容院に行けずにいました。
というのも──私はシャンプーの合成香料がどうしても苦手で、普通の美容院に行くとシャンプーの香料で具合が悪くなってしまう…。できれば天然アロマ入りのオーガニックシャンプーを使っている美容院がいい。
でも、そういう美容院はなかなか存在しないのです。

それでも、ある日ふと目に留まった一軒の美容院。
ネット検索で偶然見つけたそのお店は、AVEDAやジョンマスターオーガニックのような”オーガニック”を前面に出している美容院ではありませんでした。

決め手となったは、空間の写真でした。
静かで、上質で、どこか余白を感じさせる。
「ここなら、行ってみたいかも」──直感的にそう思えたのです。

予約ページを開くと、予約枠はすでに1ヶ月先まで埋まっていました。「サイトの不具合かな?」と電話をしてみてもつながらない。
とりあえず、フォームから予約を送信すると、予約完了の自動返信メールが1通届きました。サロンに行く前のコミュニケーションはこれだけ。
そして1ヶ月後… 不安と期待が入り混じる中、サロンへ向かいお店の扉を開けました。

「自分サイズの経営」という美学に出会った

中に足を踏み入れた瞬間、すぐにわかりました。
この空間には、お客様に快適に過ごしてもらうための強い想いがこめられているということを。

わずか2席、完全個室。
贅沢な空間づかいと、やわらかな自然光、静かに通る風。
琉球風水でいう「氣の流れ」と「陰陽の調和」が、そこかしこに息づいていました。

そして何より驚いたのが、シャンプー台で使われていたのが、まさに私が求めていた天然アロマのオーガニックシャンプーだったこと。
やさしい香りに包まれながら、心までほぐれていくような時間でした。

「この空間、どなたが設計されたんですか?」
そう尋ねると、スタイリストでありオーナーの女性が、穏やかな笑みでこう答えてくれました。

「私がデザインしたんです。
一人ひとりのお客様との対話を大切にしたくて。
効率や回転率よりも、“自分サイズの経営”がしたかったんです」

以前、経営コンサルタントに相談していた時期は、座席の数を増やし、スタッフを雇って多くのお客様に対応できるようにアドバイスを受けたそうです。しかし、それでは、一人ひとりのお客様を大事にできない。スタッフを雇えば、研修も必要になるし、人件費もかかる。会社全体の売上は上がっても、失うものも多い。持続可能な経営をするために、自分の大切にしている価値観を一番に考えて店舗を設計したとのことでした。

たくさんの人を受け入れるよりも、自分のペースで、心地よく働ける形を選んだ彼女の姿勢は、どこまでもしなやかで、美しくて、潔い。
その価値観に、私は深く共感しました。

「経営」や「働く」という言葉の持つ堅さが、
ふっとほどけて、やわらかなものへと変わっていくような──
そんな体験でした。

美容院を選ぶ決め手となった「空間の写真」。その空間デザインの中には、彼女の経営美学が反映されていたのです。

陰の力を味方にするということ

この美容院での体験を通して、私はあらためて思いました。
“たくさん”“早く”“効率よく”といった「陽」の力だけではなく、
“丁寧に”“じっくりと”“自分のペースで”という「陰」の力にも、
大切な価値があるのだと。


本当に持続可能で心地よい営みには、「陰」と「陽」のバランスが必要であることを気づかされました。

ここからは、そんな“陰”の力をどう経営者としてどのように考えていくか、
私自身の実感と共に、もう少し掘り下げてお話ししていきます。


自分らしく、無理なく続けていくための「陰」の活かし方

ビジネスの世界では、どうしても“陽”の側面ばかりが注目されがちです。

目立つこと、スピード感、数字や成果、
売上が伸びる、SNSで話題になる、
人が集まり、拡大していく──そんな「華やかで強い経営」。

でも、それだけが正解でしょうか。

東洋の陰陽思想では、“陰”にも確かな力があると考えます。
それは、目立たないけれど、着実に積み重ねていく力。

たとえば──
一人ひとりのお客様と、丁寧に向き合うこと。
時間をかけて信頼を育てていくこと。
静かに、自分の美意識を貫いていくこと。

それは効率やスピードとは対極かもしれませんが、
深く、長く、続いていく経営の土台になります。

「たくさんの人を集める」より、
「必要な人に、ちゃんと届く」こと。

「目立つこと」より、
「心に残ること」。

それが、“陰”のもつ静かな力です。

琉球風水や陰陽思想と向き合ってきたことで、
この“陰”の美しさを実感しつつあります。

派手な拡大を目指さなくてもいい。
がんばりすぎなくてもいい。
自分のペースで、深く、しなやかに、美しく。

そんな「陰」を味方にした働き方は、
続けていける強さと美しさを育ててくれるのだと思います。

陰と陽のバランスで、働き方の「軸」を整える

優秀な経営コンサルタントからどれだけ素晴らしいアドバイスをもらっても、
自分の軸がなければ、本質的な決断はできません。

陰と陽のてんびんが美しく保たれるのは、
自分自身の“軸”がしっかりとあるとき。

今回ご紹介した美容院の女性経営者のように、
他人の“正解”ではなく、自分にとっての“最適”を選ぶことで、
結果的に、お客様から選ばれる空間やサービスが生まれるのではないでしょうか。

たとえば経営における陰陽の例として、こんな対比があります:

【図解】陽と陰の経営スタイルの対比

特徴🌞 陽の経営(拡大・発信型)🌙 陰の経営(内省・熟成型)
経営の方向性拡大・スピード・発信重視継続・深さ・内面重視
行動スタイル行動力・突破力・成果を追う受容・観察・時間をかける
お客様との関係性多くの人に届ける一人ひとりと丁寧に向き合う
ビジネスの姿勢数字を追う・影響力を広げる信頼を育てる・質を磨く
空間や時間の感覚活気・明るさ・スピード感静けさ・やわらかさ・ゆとり
求める成果売上・認知・スケール信頼・満足・持続可能性
経営の美学目立つ・華やか・勢い美意識・静けさ・しなやかさ

どちらかを選ぶのではなく、どちらも必要で、
状況に応じて最適な「てんびんのバランス点」を見出す
それが、その人にとっての“経営の美学”なのだと思います。


“正しい”よりも、“整っている”を選ぶ——陰陽二元論というもう一つの見方

西洋的な思考法では、「神 vs. サタン」のように、善か悪か、正か誤かという善悪二元論に基づく判断が多く見られます。多くの人が受験や資格試験などで「一つの正解」を探し、「間違えないこと」がゴールになる教育を受けてきました。

一方で、東洋には陰陽二元論という考え方があります。ここでの“陰”と“陽”は、相反するようでいて、どちらか一方だけでは存在できず、互いに補い合う関係性をもっています。陰があるから陽がわかる。陽があるから陰が意味を持つ。

私たちは学校教育や社会の中で、「○か×か」「正しいか間違っているか」と答えを求めがちです。これは西洋的な「善悪二元論」、つまり“どちらかが正解”という考え方に基づいています。

ですが、東洋の「陰陽二元論」では、陰と陽は対立ではなく、補い合う関係にあります。昼と夜、静と動、拡大と安定……どちらかだけでは存在できず、お互いがあるからこそ全体が整う。

「陰陽二元論」の視点に立てば、「どちらが正しいか」ではなく、「今の自分にとって、どんなバランスが最適か?」と考えられるようになります。

【図解】善悪二元論 vs 陰陽二元論 ── ものごとの「捉え方」のちがい

観点⚖️ 善悪二元論🌗 陰陽二元論
ものごとの捉え方善か悪か、どちらか一方が「正しい」陰と陽、両方が存在し、循環する
二つの関係性対立・排除するもの(敵対関係)補い合うもの(相補関係)
判断の軸正義・道徳など外的基準で善悪を判断自然界のリズムやバランスなど内側の感覚を重視
結果の導き方一方を選び、もう一方を否定する両方のバランスを取って整える
例:仕事「売上=成功」「失敗=悪」結果重視・勝ち負けの思考「一人ひとりと丁寧に向き合う」目に見えない価値やプロセス重視・調和の思考
価値観のイメージ善を追求し悪を排除する生き方陰陽を受け入れ自然体でとらえる生き方

”ジャッジをすること”を目的とせず、”動的なバランスを取り続けること”の大切さを教えてくれる陰陽の思考。働き方だけでなく、生き方そのものを自由にしてくれます。


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琉球風水研究者/ロンジェ琉球風水アカデミー学長/立教大学大学院異文化コミュニケーション学修士/沖縄国際大学非常勤講師 沖縄の伝統文化としての「琉球風水」を専門とする研究者。 首里城をはじめとする歴史的建造物や都市景観に見られる風水思想を、学術文献、漢文資料(『使琉球録』など)や発掘調査報告をもとに検証し、琉球王国の空間構造と自然観・世界観を、歴史文化の視座から紐解く研究を行っている。 立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科修了(修士)。現在、沖縄国際大学経済学部地域環境政策学科にて、これから世界へ羽ばたく学生を対象に、琉球風水・地域文化、異文化コミュニケーションを学ぶ「グローカルセミナー」を講義。 また、琉球風水の知見を現代空間に応用する専門家「風水空間プロデューサー」としても活動し、主宰する「ロンジェ琉球風水アカデミー」では実践と学術をつなぐ教育を展開している。 2022年には著書『風水空間デザインの教科書』(ガイアブックス)を出版。 さらに、首里城復興イベント「木曳式」では、沖縄県より公式認定を受けイベントを開催。沖縄タイムスなどの新聞・雑誌への寄稿や講演活動を通じて、琉球風水の文化的価値と現代的意義を広く発信している。 東京都世田谷区出身で、かつてはJARTIC日本道路交通情報センターでキャスターを務めた経歴も持つ。趣味はスクーバダイビングとトレッキング。自然と対話しながら、土地の「氣」を感じる時間を大切にしている。