アロマと琉球風水ですっきり第14回 キッチン1 琉球民家の台所
自然と調和し、良い氣を取り込む
今回は、琉球民家の台所と風水について解説します。電気、ガス、水道のない時代でしたので、風、光、水などの自然界のエネルギーと調和するように、空間作りがおこなわれてきました。悪い氣を避け、良い氣を取り込んで活用することが、命をつなぐ上で重要だったということを読み取ることができます。
火と風・空気を調節
王朝時代の伝統的な琉球民家では、台所は、敷地の西側にあり、プライベート空間にありました。台所のほか、家畜小屋、納屋、井戸など西側にあり、主にその家の住人が日常生活を営む上で、必要な作業を行うエリアでした。
昔の住居では、火のコントロールを誤ると様々な危険がありました。カマドの火口に風が入りすぎると大火となります。また、火は住宅の酸素を燃焼させ二酸化炭素や一酸化炭素を含む煙をたくさん出すため、換気が悪ければ、一酸化中毒などの事故にもつながる可能性があります。一方、空気が湿っていたり、風が入らなければ火付きが悪くなります。
全体的に開放的な造りとなっている琉球民家の中でも、台所だけは、開口部が小さく、ほとんどが壁に覆われています。開口部になっていたのは、カマド側の壁の窓や、動線的に必要な西側や南側の出入り口です。強い風に火があおられることなく、また、汚れた空気が適切に排出されるために、空間をどう空気が流れるかみる必要がありました。
台所では、棚を作り、屋根裏部分などを物置として使用していました。薪や鍋、食器などを保管していました。煙が上るカマドの上には火棚を作り、薪などを乾燥させたり、上昇気流で舞い上がる火の粉が一気に茅葺にまで達することを防ぐ働きもあります。キッチンに収納するモノが多かったのは、今も昔も変わらないようです。
水は外の井戸や水がめを使用
台所には、流し台というものは無く、井戸端で野菜や魚を洗いました。まな板を置く台も無く、まな板を地べた(琉球石灰岩)に置いて、野菜をきざみ、魚をさばきました。海に近い集落では、海で魚をさばき、海水で魚を洗って、不要な内蔵などは、海に返します。切った食品は、ザルや器に入れて竈に持って行って煮炊きしました。
水道の無い頃の沖縄では、井戸が最も重要でした。各家に井戸があり、その周りは琉球石灰岩などが敷かれていました。首里など井戸の無い家では、水甕を置いて、そこに湧水を汲んできて溜めて使っており、湧水を汲んでくるのは子どもの仕事でした。水甕は主に、台所の出入り口付近におかれていました。
井戸は、家の前面の西側にあり、井戸に近い台所の出入り口に水がめがおかれていました。この水がめや井戸が、現在のキッチンの流しや洗面所として使われていたと考えられます。敷地の中でも、南西は低くなっており、排水の良さも配慮されていました。
琉球風水は自然との調和を大切にしてきました。風水を取り入れた生活では、住宅をその外部環境である自然の中に置いてみる必要があります。自然が住居に及ぼす影響には、主に、風、光、水があり、これらの自然条件は、季節に応じて変化します。その季節の自然と、住居がどう調和しているかを見て、安心、安全、快適な暮らしになるよう整えていくことで、氣の流れがよくなります。
火の神
当時の琉球民家の台所では、カマドのある場所に、火の神様をお祭りしました。「ヒヌカン」「ピヌカン」「ピーヌカン」など、地方により呼称も様々です。家族の健康と繁栄を祈願する風習は現代でも受け継がれています。
火の神はカマドの上後方に、海または川から卵型の自然石3個を拾ってきて、鼎立(ていりつ)して据えました。前には香炉を置きました。ニライカナイからの来訪神であり、琉球の神は海から上がってきたということから、海から漂って海岸にたどり着いた石を、ヨリシロとするといわれています。元々、カマドは「三つ石」に鍋をかけて煮炊きをしていました。
火災はとても恐れられていたので、火事にならないように神様を祀りました。また、食事を作る場所であることから、家族がずっと食べものに恵まれるように、あるいは食中毒に遭わないように、家族の健康や幸せを祈願するようになりました。拝む日は、1日、15日、旅立ち、航海安全、家内安全、健康、徐災、部落の行事など。先祖(仏壇)は母屋でまつり、火の神は台所でまつります。
母屋と別棟から一体化へ
台所は母屋とは別々に作られ、分棟型になっていました。最も恐れたのは火事による延焼です。そして、母屋内で炊事をすると室内に熱気がたちこめ、その上、煙がまくことを嫌うためといわれています。
明治中期に「敷地・家屋の制限令」が撤廃されてから、母屋と台所の一体型への傾向がみられます。そして、昭和37年ころから石油コンロやプロパンガスが普及し始め、煙と熱気の問題がほとんどなくなり、母屋内での炊事も快適になったため、別棟を作る必要性もなくなっていきました。
東道里璃 (とうどう りり)
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