アロマと琉球風水ですっきり第16回 リビングダイニング1
琉球民家のパブリック空間(表座)
沖縄の伝統古民家を、風水の視点から解説します。琉球民家では、母屋の空間を前後に横分割し、前室(南側)を表座(おもてざ)、後室(北側)を裏座(うらざ)としました。表座はパブリック空間として、裏座はプライベート空間として機能していました。
琉球民家の表座は、現代住宅のリビング、ダイニングにあたる場所で、ここには、自然と調和する心地よさを実現する秘密が、いっぱい詰まっています。
来客を迎え神仏を祭る
表座は、南側一体が大きな開口部となっており、穏やかな光、夏の南風といった、心地良い自然の氣エネルギーが入ってくる快適な空間です。来客を迎える空間として、また神仏を祭る空間として機能していました。表座は、敷地の中で自然界の良い氣が入ってくる最も心地よい空間ですが、そこに住む家族が普段過ごすところではありませんでした。表座は、来客を迎える空間として、また神仏を祀る空間として機能していました。
表座は、南を向いているのが基本で、東側から一番座、二番座、三番座がありました。一番座の側面と、一番座、二番座、三番座の前面に壁はなく、大きな開口部となっており、穏やかな光、夏の心地良い南風といった、心地良い自然の氣エネルギーが、表座に入ってきます。そして、この開口部には、雨端(アマハジ)と呼ばれる長い軒があり、雨が室内に吹き込むのを防ぎ、強すぎる陽射しをさえぎるなど、悪い氣をよける機能を持っています。
表座の東側にある一番座は、奥(北)側に床の間が設けられ、最も格式が高く、正式な客をもてなす空間でした。東方は太陽が昇る聖域で、神聖な方角と考えられてきました。一番座は、東南の角部屋にあたり、採光、通風、眺望が最も良い部屋です。
表座の中心にある二番座は仏間で、親族や親しい友人が集う空間です。仏壇は、母屋の中心付近に位置しています。家の中心は太極とも呼ばれ、最も氣エネルギーが集中しパワーの強い場所です。そのため、仏壇を住宅の中心付近に置くのが、道教や風水の考え方です。沖縄では、今でも仏壇の位置を決めてから家造りをする習慣が残っています。
住宅の門の位置は、仏壇の位置から決められ、仏壇から見て正面にくるように配置されました。そして、門から入ってくる氣エネルギーが直接仏壇に向かってこないよう、ヒンプンが設けられています。
琉球民家は、太陽の光や季節風の影響を考慮し、北を背に南を向いた住宅が主流です。そして、床の間も仏壇も、住宅の向きと同様に、北を背に南を向くように置かれるようになりました。そうすることで、床の間や仏壇は、明るい方角に向くようになっています。
このように、表座は、来客を迎える空間として、また神仏を祀る空間として使用されてきました。お客様やご先祖様、神様には、表(南)側の良い場所を提供したのです。
家族は北側の裏座で生活
一方、家族は暗くて寒い後室(北側)で生活するのが普通でした。ぜいたくを戒め、つつましやかな生活を美徳とするという当時の価値観も、家造りや暮らし方に反映されています。琉球民家は、周辺環境の山の位置や水の流れ、太陽の動き、季節風の向きなどに配慮し、自然との調和を大切にする風水の知恵を取り入れてきました。しかし、その背景には、当時の信仰や風習なども強く影響しており、一概に風水理論だけで、琉球民家を解説することはできません。
時代の変化に伴い、科学技術の進歩や、人々の考え方も変わり、心地よい家造りの方法も、変化と進化を続けています。昔と同じ間取りや方位にすることが、イコール風水が良いということにはなりません。琉球風水が目指すのは、現代のライフスタイルの中で、自然と調和しながら、氣の流れを整え、そこに住む人が心豊かになる環境を整えることです。
現代住宅では、客間としての空間を特別に設ける場合は少なく、家族が過ごすリビング・ダイニングが客間を兼ね、来客を迎えるパブリック空間となっているケースが多いと思います。次回は、現代住宅の中でパブリック空間として機能している、リビング・ダイニングの整え方についてお話します。
東道里璃 (とうどう りり)
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